研究課題/領域番号 |
16K01168
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
佐野 正博 明治大学, 経営学部, 専任教授 (70206001)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 原子力の社会的利用 / 原子力技術史 / 原子力論 / 原子力発電 / 技術論 |
研究実績の概要 |
原子力の社会的利用に関わる諸議論の歴史的展開を、原子力をめぐる科学・技術の歴史的進歩、エネルギー問題・地球環境問題・原発事故などの社会的事象との関係において批判的に分析することを目的に、関連資料・文献のサーベイ調査および収集をおこなうとともに、収集した資料をスキャニングしOCR処理によるデジタル・データ化をおこなった。 またそうしたサーベイ調査結果および収集した資料の内容分析に基づき、原子力の社会的利用をめぐる推進論と批判論の歴史的展開構造の分析をおこなった。 原子力の社会的利用に関わる推進論の資料としてこれまで分析対象とされてはこなかった帝国議会会議録および国会会議録を調査し、物理学者の田中館愛橘が戦前および戦後の貴族院議会において原子力の社会的利用に関連しておこなった発言内容の分析をおこない、田中館が1945年12月4日の貴族院議会本会議において、原子力の平和的利用として「原子爆薬」を工業化し台風などの発生を防止する提案をおこなっていることを発見した。原子爆弾の「平和」的利用の議論がアメリカやソ連でなされていることは一般に知られているが、原子爆弾の「平和」的利用に関して戦後間もない1945年12月の日本で田中館のような発言がなされていることはこれまで指摘されてこなかったことである。 なお関連資料・文献のサーベイ調査および内容分析の研究成果に関しては、日本科学史学会技術史分科会発行の機関誌『技術史』の第10号および第11号に投稿・掲載するとともに、http://atom.s2.coreblog.jp/やhttp://www.sanosemi.com/などのWEBページ上で公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度には帝国議会会議録および国会会議録を対象に原子力の社会的利用に関わる質問・発言を分析する作業をおこなうなど、原子力の社会的利用をめぐる推進論と批判論に関わる関連資料・文献のサーベイ調査はおおむね順調に進展している。 また関連資料・文献のサーベイ調査および内容分析の成果を日本科学史学会技術史分科会発行の機関誌『技術史』の第10号および第11号に掲載するなど、研究成果の公開も順次おこなっている。
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今後の研究の推進方策 |
1970年代石油危機、1979年スリーマイル島原発事故、1986年チェルノブリ原発事故、20世紀末の地球温暖化問題、2011年福島第一原発事故などの社会的事象との連関において、原子力の社会的利用をめぐる議論がどのように展開されてきたのかを批判的に検討・分析する。
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