研究課題/領域番号 |
16K01175
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
森 修一 国立感染症研究所, ハンセン病研究センター 感染制御部, 室長 (40559522)
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研究分担者 |
廣野 喜幸 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (90302819)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ハンセン病 / 公衆衛生政策 / 隔離政策 / 救済事業 / 鈴蘭村 / 学術データベース作成 / 資料の保存 / ハンセン病の医学史 |
研究実績の概要 |
現在、日本のハンセン病政策は公衆衛生政策上の過失であったと評価されるが、その実態は未だ十分には検証されていない。その要因の一つがハンセン病の医学的側面の研究の不十分さ、日本と世界のハンセン病政策の比較研究の不足にある。本研究では日本のハンセン病政策を再評価するために、日本と世界のハンセン病関連資料(特に医学資料)を研究すると共に、これらの資料に加え、これまで公開されていなかった資料を収集し、データベース化を行い公開し、今後の研究の進展に寄与すること、これらの資料を保存しハンセン病の歴史を未来へ語り継ぐことを目的として研究を行った。本年は、群馬県草津温泉で昭和の初めに展開された日本人医療関係者(三上千代、服部ケサ)による民間救済事業である「鈴蘭病院」、「鈴蘭村」が国立療養所栗生楽泉園の建設を促したこと、これらの民間事業は救済だけでなく公衆衛生対策として行われたこと、当時の患者のおかれた状況は非常に過酷であり、日本人による救済が始まった事などを明らかとした。また、同じく三上千代により宮城県で行われた「鈴蘭園」事業についての調査・研究を進展させた。この他、ハンセン病療養所職員OBとの対談調査を進展させると共に、その過程で多くの資料の提供を受けた(岡田誠太郎、湯浅 洋、荒川 巌、など)。これまで収集した医学関連資料を中心に約700点のデジタル化を終了させた。この他、データベースに歴史データを加え、資料の時代背景検索機能を付加した。また、ハンセン病の社会啓発効果を「ハンセン病医学夏期大学講座」のアンケートから調査し、学術データベースのフル公開(現在は限定公開)へ向けて、どのような資料をどのように提示すべきかを研究した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
資料の収集とデジタル化が大幅に進展し、データベースに資料の時代背景を検索できる機能を付加すると共に分類項目を増やし、多面的な資料を提示するための改良を行った。また、療養所職員OBなどへの聞き取り調査とデータベース事業への資料の提供を進めた。また、民間救済の実態、患者のおかれた状況の客観的検証を進め、「鈴蘭病院」、「鈴蘭村」、「鈴蘭園」事業の日本の隔離政策に与えた影響を検証した。この他、日本の隔離政策下での入所(新入所、再入所、転入)退所(死亡、軽快退所、自己退所、転園、その他)などの実数を明らかにし、予防法ごと、時代ごとにその詳細を明らかにした。本研究から日本の隔離政策102年間の入退所動向が始めて明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
2017年度はデータベースのフル公開を十分な倫理審査と個人情報保護を厳守して行い、多くの方々にハンセン病に関する客観的な資料を提示し、社会啓発や学術研究に役立てる。また、療養所職員OBへの聞き取り調査、療養所退所者への聞き取り調査、療養所の外から援助を行った方々などへの調査を進め、ハンセン病隔離政策下での療養所の実態とハンセン病医療の問題点なども明らかとし、隔離政策維持の要因を多面的に明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末納品等にかかる支払いが平成29年4月1日以降となったため、当該支出分については次年度の実支出額に計上予定。平成28年度分についてはほぼ使用済みである。 (使用計画)
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次年度使用額の使用計画 |
上記のとおり。
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備考 |
ハンセン病政策と医学の関わりを医学史・科学史的に明らかにし、新たな検証の論点を提示すると共に、これまで未公開の資料のデータベース化を行い、順次改善し、多くの研究者に役立てることが目標である。
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