本研究の調査・分析を通じて、東日本大震災と福島第一原発事故により被災地で顕在化した地域資料の保全・継承の危機は、自治体の文化財行政の脆弱さや自治体史編さん事業の停滞、郷土史家の高齢化・後継者不足などにより災害前から広域で進行するなど、歴史学や資料保全を支える地域の力の弱まりが浮き彫りになった。本研究による資料所在情報のデータ集積の成果をもとに、総合的な資料保全と地域史叙述を軸に地域課題の解決をめざす地域総合資料学の手法は、大学の「専門知」と地域社会の「社会知」を有機的に連関させ、多様な地域課題の解決に有効性を発揮する有効な手法であることを、現場での実践例を通じて実証できたと考える。
|