今年度新たに開発した狭小坑道対応型ロボットを用いて、従来3次元レーザ測定が困難であった坑道の調査を行った。これまで3次元レーザスキャナを搭載したロボットを用いた測定の際には、ロボット本体が静止している必要があった。しかし急勾配の下向き坑道測定の際にはロボットが静止するまで時間を要する場合があった。そこでロボットの振動を定量化してロボットが非静止状態でも測定可能なシステムの開発を試みた。しかし従来の3次元レーザスキャナの重量が約5kgwであった為、不整地を走行すると駆動系ユニットが変形していた。そこで測定精度は劣るが軽量化された3次元レーザ測定機を用いて坑道内測定を試みた。またこれまで構築してきた坑道内や坑道周辺地形の3次元レーザ測定結果と古文書や鉱山絵図との比較検討を行い、地中での坑道間の相関関係の解明を行った。次に開発した3次元レーザ測定システムを応用することで、選鉱道具、鉱山臼等、鉱山関連遺物の定量データを現場で効率良く測定可能となった。更にこれら坑道内や坑道周辺地形を含めた鉱山関連遺跡の定量データを坑道採掘年代推定の指標として使用できないか検討した。その結果、鉱山稼働時の採掘状況や鉱山遺跡の文化的価値を定量的に評価することが可能となった。 本年度もこれまでと同様、鉱山遺跡周辺の方々に埋蔵文化財としての鉱山遺跡の価値を再認識してもらうため、全国各地の博物館や公民館(石見銀山世界遺産センター、佐渡金銀山金井コミュニティセンター、多田銀銅山悠久の館、湯之奥金山博物館)等で成果報告会やものづくり教室を実施した。特に世界文化遺産を目指す佐渡金銀山では、地元小学校で「3次元レーザスキャナ搭載型ロボットを用いた佐渡金銀山調査結果」と題して講演を行った。また生徒諸君に坑道調査に同行してもらいロボットを用いた調査の様子を実体験してもらった。
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