1. 絵画レプリカの作成を行った。これまでは、スライドガラスの上に絵具1層を塗布して作成してきたが、今回はより実際の作品に近い形をめざし、ベニヤ板の上に地塗りを施したあとで絵具を塗布したレプリカを作成した。 2. メンブレン法によるコラーゲンの同定を試みた。この方法では実資料にメンブレンを張り付けることによりコラーゲンを吸着させ、そのコラーゲンを分析するので、サンプルを採取しなくてすむ、メンブレンによって蛋白質を精製できるというメリットが見込める。数種類のメンブレンや溶剤を用いて試みた結果、蒸留水に浸したC18メンブレンを用いる方法を選択した。現在、レプリカを用いたテストではコラーゲンの同定ができている。 3. ELISA法の改善を行った。プレーティングバッファーの組成を変更することで、抗体での検出感度を上げた。 4. 多くの実資料の分析を行った。クロード・モネ作品(西洋美術館所蔵)の絵具試料(GC/MS、LC/MS)、フランドル板絵(西洋美術館所蔵)の絵具試料(GC/MS、LC/MS)、クク王第2の「太陽の船」からの試料(GC/MS)、エジプトの壁画試料(ELISA)、アフガニスタン・ハッダ遺跡の石仏の彩色試料(LC/MS)、バーミヤン遺跡の壁画試料(LC/MS、LC-TOF-MS)の分析を行い、乾性油(GC/MSによる)の同定や膠の動物種の同定(ウシ、ウサギ、ウマ、チョウザメなどを同定。LC/MSによる)、カゼインの同定(LC-TOF-MSによる)ができた。また、ロサンゼルスのゲッティ保存研究所に研修に行き、GC/MS、熱分解GC/MSの分析法を学習してきた。
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