調査最終年度は、大規模な調査として(1)国立パリ自然史博物館において1877年に文部省博物館との間で実施された鳥類標本交換に関わる歴史資料調査と日本から送られた標本の探索、(2)スミソニアン協会国立自然史博物館において1880年代に教育博物館から同定依頼を目的に送付された標本調査を実施した。(1)では、同館から日本に送られた97点の標本の標本番号及び種名を確認し、山階鳥類研究所所蔵標本との照合が可能となった。同館の標本台帳から、ラベルから判読できなかった採集者名や標本番号を確定し、採集年次下限の復元を進めることとなった。一方、日本から送付された標本群のほとんどを確認することができず、若干確認できたものからも1870年代の文部省博物館における標本管理の状況を明らかにすることはできなかった。(2)では同館が発表した論文を基にタイプ標本を含む日本産標本を確認した。この他、帝室博物館旧蔵標本群のうち小規模な標本寄贈に関わる歴史資料の探索調査を実施し、20世紀初頭の南鳥島事件の際に採集された標本など現存する標本の背景情報を確認した。 調査期間中に得られた標本情報を基に、山階鳥類研究所に現存する標本の採集情報を復元、修正する情報カルテを作成し、日本最大の鳥類標本コレクションの核の一つである帝室博物館旧蔵標本約3300点の標本情報を充実させ、研究資源としての価値を向上させた。本研究で整理した標本情報は山階鳥類研究所に提供することとしており、今後の研究活動の発展に寄与するものと考えられる。また、調査対象となった標本のうち、海外産標本については、山階鳥類研究所のデータベース上で誤った情報が登録されている場合が多く、それらがGBIFなどの国際的データベースにも反映されていることから、本研究で得られた知見により、世界規模のデータベースの情報の精度が高まることも期待される。
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