本研究は、2020年に開催される東京オリンピックをこれまでのテレビ映像のように、競技中の特定の選手だけを記録するのではなく、フィールド内やベンチにいるすべての選手、関係者、また、観客席で応援する市民、さらには、将来有形の文化財となるであろうスタジアムの建築物まですべての風景をフレームレスな超高解像度映像として記録し、博物館資料にするものである。最終年度は、各種競技団体の協力のもと、各種スポーツ(陸上競技、バスケットボール、バレーボール、卓球、体操)を4Kや8Kカメラに魚眼レンズをつけて撮影するドーム映像だけでなく、近年急速に普及し始めた全天球カメラを使ったVR映像としても撮影した。また、それらの映像を実際に営業中のプラネタリウム館を借用して投影実験を行った。また、国内の主なプラネタリウムメーカーなどに集まってもらい、生中継をする際のファイル形式(具体的には、プラネタリウムで標準的なドームマスター形式を使うのか、VR映像で標準的なエクイレクタングラー形式を使うのかなど)や伝送方法について議論した。ドームマスターの場合、正方形フォーマットであり、通常の映像伝送の16:9や2:1の長方形フォーマットでないために、ドームマスター形式であっても長辺を切り取らない形式や、エクイレクタングラー形式がふさわしいという結論に達した。オリンピックの撮影や中継に関しては、様々な権利問題があるため、研究素材としては利用しにくいため、ドーム映像と平面映像、さらにはVR映像との比較実験などは、一般的な風景を用いて行った。ドーム映像に関しては教育効果で言えば、導入時に効果があり、興味関心を持ったあとは、注目すべき被写体にフォーカスをした平面映像が効果が高いことがわかった。また、ドーム映像とVR映像との比較では、視聴行動に明らかな違いが認められ、その効果に関しては引き続き研究を続けている。
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