本研究は明治~昭和時代の手芸教育に脚光を当て、現存作品をアーカイブ化し手芸文化データベースの基盤を作り、教育現場で活用と手芸文化継承を目指し、また海外に向けて日本の優れた手芸文化を広く発信する手段を見出すことを研究目標とした。最終年度では、データベースの補完と入力を行ない、最終的に4校分881点を収録したデータベースを完成させた。また関連する手芸技法書5冊から画像と記述を追加した。その結果、不明だった作品の大多数は昭和時代前期に制作されていたこと、各大学で制作された技法に類似があることを明らかとした。また明治~昭和時代までの代表4大学の年表を作成し、学習内容と現存作品をプロットし一覧できるようにした。 本研究では早稲田システムの博物館データベースを利用して非公開で制作した。HP内の検索機能が充実しており、技法や学校名等から作品を検索することができるのが特徴であり、被服教育を受けたことのある学生30人に使用してもらったところ、検索機能は便利であるが、技法の知識がないと利用しにくいという意見が上がった。このため掲載点数を絞ったテスト版として一般的なHPとSNS(インスタグラム)版を作成した。これについては、見やすく馴染みやすいが、詳しい情報が分からないという意見もあった。これらの意見から、若い世代へ発信するためにはSNS版を利用し、詳細はデータベースとリンクさせる方法が有効であると考えられる。本研究のデータベース等に触れ、現存手芸作品に興味を持った学生のうち4名が計7点の復元作品を制作し卒業研究として取り上げるなど、データベースによって学生の学びを活性化できた。博物館との相互利用、画像の著作権、公開、外国語等に対応等については協議する問題点は多いが、将来的にこれらを解消することで、データベースは日本の手芸文化を発信する重要なツールとなり、活用する必要があることが明らかとなった。
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