研究課題/領域番号 |
16K01209
|
研究機関 | 弘前大学 |
研究代表者 |
井岡 聖一郎 弘前大学, 北日本新エネルギー研究所, 准教授 (40598520)
|
研究分担者 |
町田 功 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地圏資源環境研究部門, 研究員 (80435768)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 地下水 / 水質 / 硫酸還元 / 帯水層 / 蓄熱 |
研究実績の概要 |
積雪寒冷地域で普及を目指している帯水層蓄熱の利用を妨げている要因の一つに,蓄熱過程における有毒な硫化水素の生成がある。硫化水素は,帯水層中に存在する微生物が有機酸等をエネルギー源として硫酸還元反応を起こし生成される。しかしながら,蓄熱過程における地下水中の有機酸濃度がどのような変化をするのか解明されていないことから,硫酸還元反応を発生させずにどのくらいの温度まで帯水層蓄熱が可能であるのか不明である。本研究では,様々な温度条件下で加熱実験を行い,地下水中の有機酸濃度を測定することにより,微生物が硫酸還元反応を発生させるために必要な有効エネルギーがどのくらいの温度で帯水層中に存在するのか解明することを目的とする。 平成28年度は,砂礫層からなる既存の深度10mの観測孔(青森県田舎館村)から地下水を採取し,有機酸である酢酸イオンとギ酸イオン(他の化学成分も含む)濃度の変動を明らかにすることを目的に研究を実施した。その結果,酢酸イオン,ギ酸イオンともに濃度が変動することが明らかになった。また,想定していなかった乳酸イオンも地下水中に含まれていることが示された。さらに,予察的に微生物による硫酸還元反応に関連する有効エネルギーを算出した結果,これまで微生物活動による硫酸還元反応が停止する場合があると報告されている有効エネルギーの範囲を超える値ではなかったことが明らかになった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の研究開始時,有機酸イオン濃度の分析に使用する分析装置の不具合が発生したが,研究後半では無事に回復したので,平成28年では良い成果が得られたと考える。
|
今後の研究の推進方策 |
平成28年度の研究結果から当初想定していなかった乳酸イオンが採取した地下水中に存在していることが明らかになったため,平成29年度は予定していた帯水層の原位置加熱実験ではなく,採取した試料そのものの加熱実験時により有機酸イオンの濃度変化を解明し,その結果を用いて微生物活動による硫酸還元反応の有効エネルギーの算出を試みることを考えている。
|