研究課題/領域番号 |
16K01214
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
八反地 剛 筑波大学, 生命環境系, 講師 (00418625)
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研究分担者 |
土志田 正二 総務省消防庁消防大学校(消防研究センター), 技術研究部, 研究官 (20526909)
田中 靖 駒澤大学, 文学部, 教授 (80348888)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 微地形 / 斜面地形学 / 土砂災害 / 花崗岩山地 |
研究実績の概要 |
本研究課題では水路頭の位置が過去の崩壊履歴に対応するという仮説に基づき,高解像度DEMを用いて,水路の発達状態の分析を行い,水路頭の位置を考慮して崩壊発生予測モデルを再構築することを試みている. 本年度は,2014年に土砂災害が発生した広島市の花崗岩山地を対象として,水路頭(流路発生点)と湧水の分布に関する現地調査を行った.また高解像度 DEM(解像度1 m)を用いて,豪雨前の水路頭の位置を推定し,豪雨前後での水路頭の移動状況を把握した.豪雨後に表層崩壊伴って形成された新しい水路頭は集水面積と斜面勾配の間に強い負の相関係がみられたが,豪雨前の水路頭には集水面積と斜面勾配の間には有意な相関関係はみられなかった.さらに,豪雨前の水路頭の多くは,豪雨後に地下水の流出が生じている湧水点とに近接していた.また,豪雨前には10000平方m程度の大きな集水域を有する水路頭が存在していたが,豪雨時にはそれらの集水面積の大きな水路頭の流域内で表層崩壊が発生していることを確認した.同様の現象は2009年に土砂災害が発生した山口県防府市の花崗岩山地にも見られており,普遍的である可能性がある. 広島市の花崗岩山地において過去の崩壊の微地形の状況が異なる2つの谷頭斜面を対象に,土壌断面を観察し,谷頭斜面において埋没土壌やその断片を確認した.また,2014年の斜面崩壊とともに新たに形成された水路頭の直下において木炭を採取した.今後採取された計6試料の年代を分析する予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
山口県防府市と広島県広島市の花崗岩山地において,水路頭に関する現地調査を進め,両地域における流路発生条件が明らかになった.また豪雨イベント前後の位置変化や湧水地点と水路頭の位置関係についての現地調査をほぼ終えており,データ整理を進めている.また,対象地域の一部では年代測定用の試料も採取済である.当初計画では,広島と防府の両地域で年代測定試料を採取する予定であったが,防府の調査地には植生が密に発達しており,非崩壊斜面での調査が困難であることが判明したため,その対応について検討している.
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今後の研究の推進方策 |
2016年度に広島市の花崗岩山地において採取された試料の炭素年代測定を行う.また,防府地域の一部の土石流跡において木炭層の露出を確認したことから,それらの試料の年代測定を行い,両地域の過去の崩壊履歴について検討する. 広島市の堆積岩山地において水路頭の分布調査を行い,流路発生条件と地質の関係について検討する.さらに,各地域の崩壊地において,土壌物理性に関するデータ(透水係数,せん断強度)を取得し,崩壊危険度分布図を作成する. 一方,2016年度の主要な成果である2つの花崗岩山地(広島市と防府市)における豪雨前後の水路頭の位置変動に関する投稿論文を執筆し,2017年度内に国際学術誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
広島地域において放射性炭素年代測定の試料を採取したが,2017年度にまとめて分析した方が安価であること,また気候条件のよい4月から5月に現地調査を行うための旅費を確保しておく必要があるため,次年度使用額が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度使用額を用いて気候条件のよい2017年度の5月までに現地調査を2回実施する.また,放射性炭素年代測定の試料分析を6月までに実施し,2016年度分とまとめることで分析費の効率化を図る.
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