研究課題
本研究課題では水路頭の位置が過去の崩壊履歴に対応するという仮説のもと,高解像度DEMによる水路網の判読と斜面安定度マッピングの技術を重ね合わせて,崩壊発生予測分布図を改善することを試みた.研究対象地域は山口県防府市,広島県広島市安佐南区である.研究内容は(1)崩壊予測分布図の作成,(2)豪雨に伴う水路頭の変動,(3)水路頭堆積物の年代測定によって構成される.(1)について,現地において土層の物性を測定し,それらの測定値に基づき山口県防府市剣川流域の安定性分布図を作成した.得られた数値をそのまま利用すると,崩壊を引き起こす降雨強度の閾値が実際の値より小さくなるが,透水量係数を大きく設定することにより,問題が解消できることが示された.(2)について,現地調査や豪雨前の高解像度DEMに基づき水路頭の変動を推定した.広島・安佐南区の調査地では豪雨前には集水面積10000平方mの水路頭が存在していたが,豪雨後には崩壊に伴い新たな水路頭が斜面上部に形成され,大集水域の水路頭が消失する傾向があった.また,豪雨に伴って形成された水路頭には集水面積と勾配に明瞭な負の相関関係がみられた.山口防府の調査地においても同様の傾向が確認された.(3)について,各地域で複数の水路頭や1次谷堆積物中の埋没土壌中の木炭を分析した.その結果,山口・防府の年代値は345-810 y BP,広島・安佐南区の水路頭付近の木炭の年代値は670-1194 y BPの範囲にあった.各地域内での年代値のばらつきは各1次谷の崩壊周期の違いに対応していると考えられる.また,広島・安佐南区のデータには,崩壊周期と1次谷における水路頭の変動量に関係があることが示唆された.今後これらの研究成果については,精度上の検証を進めて,国内外の学術誌に論文として公表する予定である.
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すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件) 学会発表 (7件)
Geomorphology
巻: 329 ページ: 129-137
10.1016/j.geomorph.2018.12.022