研究課題/領域番号 |
16K01216
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
遠藤 徳孝 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (60314358)
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研究分担者 |
水上 知行 金沢大学, 自然システム学系, 助教 (80396811)
松四 雄騎 京都大学, 防災研究所, 准教授 (90596438)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 河川モデル実験 / 山地河川 / 岩盤河床 / 傾動隆起 |
研究実績の概要 |
河川地形の発達は、河川自身の削剥作用と隆起や沈降などの地殻変動の2つに大きく支配される。山岳河川は長期に渡って侵食が働く場であり、且つ多くの場合、継続的な隆起活動を受けている。隆起の速度は、小さい流域に対しては空間的に一様であると見なせる場合もあるであろうが、一般的には非一様である。その中で最も単純なケースとして、空間的に一定割合で隆起速度が変化する線形傾動(以下、傾動)が考えられる。この最も単純なケースであっても変化する向きに任意性があり、様々な場合が考えられる。以前の課題では、山側(上流側)が海側(下流側)よりも速い場合(ここでは、山側優勢傾動と呼ぶ)に河川地形がどう変化するかを室内モデル実験によって調べた。 本課題の初年度では、逆向きのセンスである海側優勢傾動(隆起速度が山側よりも海側の方が速い場合)に河川地形がどう変化するかを室内モデル実験によって調べた。傾動軸の方向に投影した本流縦断形をみると、海側優勢傾動を受けた流路が時間とともに標高が安定していく様子が見て取れた。積算の隆起量と標高変化量から求めた積算浸食量は、中流域が隆起開始と同時に増えていくのに対し、上流域は1 時間以上抑制された。その後上流域の浸食が開始されたが、その時間以降に、それまで標高が足りなくて侵食が抑えられていたと考えられる遷急点が上流に後退する様子が観察された。一方、発達した地形をリセットせずに引き続き行った陸側優勢傾動での累積浸食量は、中流と上流域での河床の時間変化に定性的な差がなかった。海側優勢傾動の際に形成された中流域の凸状区間は陸側優勢傾動の最中に消滅し、谷頭浸食が促進されなめらかな縦断形形状に至った。そのため、中流域の凸状区間は、海側優勢傾動隆起で特に発達しやすい特徴であることが示唆される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度までは、実験装置の性質上、山側(上流側)の方が海側(下流側)より隆起速度が速い場合(山側優勢傾動)しか行えなかったが、ベースレベル(侵食基準面:実験では仮想的な海水面)に対して相対的に陸地が隆起できるよう、高さが可変の堰を取り付ける改良を実験水槽に施こした。水槽全体の傾斜角と堰の高さを独立に制御することができ、可能な実験条件の幅が広がった。 野外調査で採取した試料については、一部泥岩質なものを除き、同位体比の測定に成功した。地形学的な解釈は今後の課題であるが、各場所の削剥速度の推定は行えた。
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今後の研究の推進方策 |
実験水槽の改良により、水槽全体の傾斜角と堰の高さを独立に制御することができるようになった。これにより、隆起に関する実験条件は、実現可能な幅が広がった。先行研究では行われていたが、本課題の1年目では傾動隆起に着目していたため行なわかった、空間的に一様な隆起の場合について、同一の水槽及び実験模擬物質を用いた試行を、これまでの結果と比較するために行う予定である。 また、野外調査に関しては、引き続き四万十川流域内での岩石試料採取を行う予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験に使う砂などの模擬材料が、多少以前からの残部を活用することで、購入時期を遅らすことができたため。砂は腐ったりはしないが、研究室内で在庫を置く場所も限られているため、多くを一度に買い置きできない。わずかに年度をまたいだだけで、次年度初めにはすぐに購入の必要がある。
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次年度使用額の使用計画 |
年度明け早々に、豊浦珪砂を注文する。 この報告書を書いている時点ですでに発注、納品済み。
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