研究課題/領域番号 |
16K01217
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
水谷 瑞希 信州大学, 教育学部, 助教(特定雇用) (20630354)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ミズナラ / コナラ / 豊凶 / フェノロジー / ツキノワグマ / 大量出没 / マイマイガ |
研究実績の概要 |
調査としては,ミズナラ,コナラの①開花フェノロジーの把握,②豊凶モニタリングおよびその関連調査を実施した。①については,平成28年春は平年より気温が高かったため,フェノロジーの進行も早かったことから,インターバルカメラの設置ではなく定期観測を中心に,中部日本の約20地点(標高25m~1600m)で調査を実施した。②については,対象樹種の着果状況のほか,食葉の程度,マイマイガの卵塊数などを夏期および秋期に調査した。 解析としては,①ミズナラ,コナラの個体レベルの豊凶に影響する気象要因の探索,②ミズナラの豊凶に影響する気象要因の長期的な特異性に関する分析を実施した。①については,GLMMを用いて個体レベルの豊凶に影響する気象要因の探索を行った(生態学会講演)。春期の気象値については,従来の暦を基準とした集計のほか,積算温量から推定される開芽時期を基準とした集計値を用いて解析を行った。その結果,ミズナラでは前年の着果量と,前年夏と当年春(開芽時期基準)の気象要因から,当年の着果量を推定するモデルを構築することができた。一方コナラについては,前年の着果量と各種気象要因が着果量に影響することは示唆されるものの,あてはまりの良いモデルは構築できなかった。②については,ミズナラの豊凶に影響する気象要因の豊作年・凶作年における特異性を,過去35年間の気象値との比較により検討した(森林学会講演)。その結果,凶作の引き金となる気象要因が,クマ大量出没年において極値となっている傾向は見いだせなかった。このことは,獣害や有害捕獲の多寡が,気象要因によってもたらされる堅果類の豊凶だけでなく,他の要因(対象種の個体数水準や景観構造の変化など)の影響も受けていることを示唆していると考えられた。また,福井県におけるマイマイガの大発生から終息までの経過をとりまとめた(中部森林学会講演,雑誌論文)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では①豊凶と気象要因等との関連の解明,②豊凶予測モデルの構築と空間的な豊凶傾向推定,を目標としており,このうち①を29~30年度に,②を30年度に行うことを計画している。①は,とくに中部日本地域でクマ大量出没との関連が強いミズナラについては,すでに一定の目処が立ったと言える。一方,コナラについては引き続き解析を進める予定である。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの調査と解析から,コナラ属樹木の豊凶に影響する気象要因を特定する上で,春期のフェノロジーを把握することの重要性が示唆された。開芽時期については,積算温量に基づく予測モデルが報告されていることから,29年度以降はその妥当性の検証を軸として,開芽から展葉までのフェノロジーの調査と分析を実施する。 このほか,豊凶モニタリング調査,関連資料の収集等について,計画通り実施する。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由としては,(1)インターバルカメラの設置仕様,選定機種および台数を見直したことにより物品費を縮減したこと,(2)学会の参加日程を短縮したことにより旅費を縮減したこと,(3)初年度は野外調査を調査補助者なしで実施したため,人件費・謝金が発生しなかったこと,などが挙げられる。
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次年度使用額の使用計画 |
これらの金額と次年度以降に請求する研究費を合わせた使用計画としては,(1)野外調査および各行政機関等への資料収集・打合せにかかる旅費,(2)調査補助・資料整理にかかる人件費・謝金,を予定している。
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