研究課題/領域番号 |
16K01227
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
中辻 享 甲南大学, 文学部, 准教授 (60431649)
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研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
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キーワード | 土地利用 / 森林 / 焼畑 / 航空写真 / コロナ衛星写真 / 第2次インドシナ戦争 / ベトナム戦争 / ラオス |
研究実績の概要 |
平成29年度の成果としてまず挙げるべきは、本研究課題の成果をも盛り込んだ博士論文『ラオス焼畑民の土地利用戦略』を書き上げ、京都大学博士(文学)として博士号を取得したことである。本論文の第3部は「長期的な土地利用変化」というタイトルであり、そこに収められた「第2次インドシナ戦争の影響」では、ラオス農村部の現在の状況を理解するためには、第2次インドシナ戦争(1960-1975年)の時代までさかのぼって、人口や集落の動態、土地利用の変化を考察することが必要であることを、事例をもとに明らかにした。この戦争がラオスの焼畑民や土地利用に大きなインパクトを与えたことはよく知られている。しかし、人口や集落、土地利用の変化が具体的にどのように起こったのかが明確にされていない。それを明らかにした点で、本論文は貴重と言える。 また、博士論文執筆のため、遅れてしまっているが、この「第2次インドシナ戦争の影響」という章は、英文雑誌に投稿するために加筆修正を行なっているところである。戦争によりどのように土地利用が変化するかというテーマは近年、土地利用研究の中でさかんに論じられるテーマとなっており、コロンビア、ニカラグア、ナゴルノ=カラバフ、スリランカなどの事例が論じられている。こうした研究にラオスの事例を位置づけようと、文献調査を行なった。 さらに、3月にはラオスに渡航し、対象地域での戦争時の土地利用に関して追加調査を行なった。 こうした古い時代の土地利用変化を明らかにするためには、航空写真の利用が不可欠となる。アメリカ合衆国はラオスおよび周辺地域の航空写真を1940年代~1960年代に多数撮影している。その標定図も存在するが、使いにくい。そこで、3月にはこの標定図をGIS上で地図上に表示し、整理する作業を開始した。これで、標定図上の撮影位置が地図上のどこに当たるのかが一目でわかるようになる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、英語論文は平成29年度中に執筆するとしていたが、それができていないため。
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今後の研究の推進方策 |
まずは英語論文を早急に書き上げる。また、上記の航空写真の標定図の整理を行いたい。GIS上でラオスの地図上に標定図を載せる作業を行い、どの地域でどれほどの写真がいつ頃撮影されたが把握できるようにする。平成30年度中にラオスの標定図だけでも整理し終える。 さらに、現在までのところ20平方キロメートルほどの小さな範囲の土地利用変化しか考察できていないので、より広域の土地利用変化の解明を目指す。具体的には、ルアンパバーン県シェンヌン郡の全域(1210平方キロメートル)を対象に、1940年代以降の集落の分布を明らかにし、第2次インドシナ戦争の前後での集落分布の変化がどれほど激しかったかを明らかにしたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 論文作成に時間がかかり、当初予定していた夏期休暇期間中のラオスへの渡航ができなかった。また、ラオスの航空写真を大量に購入する予定であったが、その購入を見送ったことも理由としてあげられる。 (使用計画) 「今後の研究の推進方策」でも述べたとおり、平成30年度は広域的な土地利用変化の解明を行いたいと考えている。そのために古い航空写真を大量に購入することが必要である。また、8月にはカナダに渡航し、学会発表を行い、3月にはラオスに渡航し、調査を行う。
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