研究課題/領域番号 |
16K01229
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研究機関 | 国立極地研究所 |
研究代表者 |
奥野 淳一 国立極地研究所, 研究教育系, 助教 (00376542)
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研究分担者 |
三浦 英樹 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (10271496)
菅沼 悠介 国立極地研究所, 研究教育系, 准教授 (70431898)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 第四紀海水準変動 / アイソスタシー / 地殻変動 |
研究実績の概要 |
当該年度は,完新世における日本列島沿岸域の海水準変動について,沖積平野の形状・地下構造といった情報をまとめ,それらのデータベース化を順次進めた.並行して地殻変動を再現する数値モデリングの入力値について精査した.昨年度より着手した沖積平野データベース構築に関して,近年の出版データを中心にコンパイルを行い,年代等のデータを精査して,年代較正等を含めた処理を行い,データベース構築を引き続き行った.数値モデリングコード開発においては,昨年度開発した地球回転変動が及ぼす効果を詳細に計算できるコードを用いて,入力値となる地球内部粘性構造および第四紀氷床変動史について広範囲に渡るパラメータを設定し,数値計算を行った.地球回転変動の効果を考慮した球面調和関数の低次の地球変形と第四紀海水準変動について,数値計算結果と観測値の詳細な比較を進めた.様々な初期設定を仮定した数値実験を展開し,主に粘性率依存性に着目して定量的評価を進め,論文として公表した.完新世の氷床変動に関しては,主にグリーンランド氷床変動に注目し,海水準変動のデータのみならず測地データを含めた検討を行い,氷床融解の時空間変動を検討した.また,高時間・高空間分解能での計算を可能とする計算コードの開発とスーパーコンピュータの使用を見込んだ移植についての準備を行い,高解像度計算で必要とされる計算機のスペックや計算時間等の見積もりについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度についての研究計画は,地形と関連させた堆積物データベースの構築の完成を目標としていた.そこで,既存のデータセットの修正および,そのデータセットを本研究で効率的に利用できる形式への再構築を順次進め,その利用手順についての方法を確立した.この方法より数値データの取得・整備等が次年度までに円滑に完了することが見込まれ,さらに昨年度進めた解析ツールの開発を並行して高精度化させ,データ解析についても順調に結果を得ている.さらに,数値モデリングコード開発においては,地球回転変動の効果をこれまでの第四紀海水準変動復元モデルへ実装が完了し,高解像度計算へむけたコード開発に着手した.また,さまざまな初期値に基づく数値計算を展開し,低次(長波長)の地球変形や完新世の両極氷床の融解,および地球内部粘性率の鉛直構造について,これまで提案されているモデルとは異なる新しい知見を得た.これらの一部について,論文として公表することができた.これらのことから,おおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
地形と関連させた堆積物データベースの構築について,主に日本の大規模平野に焦点を絞って,ボーリング等の既存のデータセットの収集を進め,本研究課題で進めるデータベース構築を完了させ,並行して進めている数値計算結果と統計的に解析するツールを開発する.さらに,構築したデータベースを用いて,第四紀海水準変動の数値的な復元結果との比較を進め,それぞれの沖積層の形成史を検討する.現在までに得られた氷床融解史と地球内部粘性構造を用いた数値計算を実施し,最適なモデルパラメータの探索を行い,海水荷重のアイソスタシー効果でどの程度説明可能かを再検討する.並行して,堆積物荷重による地殻変動の数値モデリングコードの開発を進め,さらに第四紀海水準変動復元モデルへの実装を進める.
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次年度使用額が生じた理由 |
データ解析のために当該年度に採用予定であった技術補佐員の採用を見送ったため.次年度に行う最終的なデータサーバ構築のための人件費として使用予定である.
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