研究課題/領域番号 |
16K01230
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研究機関 | 国立研究開発法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
阿部 学 国立研究開発法人海洋研究開発機構, 統合的気候変動予測研究分野, 技術副主任 (50377983)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 積雪アルベドフィードバック / シベリア / 気候モデル |
研究実績の概要 |
シベリアの冷帯気候帯の形成メカニズムにおける積雪-アルベドフィードバック効果を明らかにする目的のため、本年度は、気候モデルを用いた実験を行い、ユーラシア北部の積雪気候の特性とチベット高原やロッキー山脈のような大規模山岳の存在の関係を調べた。気候モデルによる実験では、大規模山岳の有無を条件にした実験を複数行い、大規模山岳の有無による積雪分布の違いを解析した。チベット高原だけ無い条件の実験では、チベット高原のある、通常の地形の設定の実験に比べて、シベリア域の積雪の広がりが遅く、逆に、ユーラシア北西部の積雪の広がりが早く起こった。また、融雪期の春季には、チベット高原が無い条件の実験では、チベット高原の北部のモンゴルなど中央アジアでの雪解けは通常の地形の場合より遅い。一方、晩春の5月・6月の頃のシベリア域の積雪域の縮退については、チベット高原の無い場合の方が早くに生じていた。地表気温についても、シベリア域はチベット高原が無い条件の方が気温が高かった。ロッキー山脈の無い条件による実験では、ユーラシアの積雪や気温への影響が見られるが、顕著ではなかった。地表面でのアルベドにおいても、上記の積雪域の広がりの違いに対応し実験間で異なり、チベット高原がある場合は、秋季はより早くにアルベドが高くなり、春季もシベリアではアルベドの高い状態が相対的に長く維持される。以上のように、ユーラシア北部の積雪分布特性において、チベット高原の存在がロッキー山脈より重要であることがわかった。 さらに、積雪-アルベドフィードバックの評価法の検討のため、将来予測実験データを用いた解析結果を国際学会で発表し、関連する研究結果の情報収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実施計画書のうち、気候モデル用いた感度実験とそのデータ解析を行うことができた点で、予定どおり研究が進んでいる。また、実験結果も概ね想定していた結果であり、次の感度実験についても予定通りに実施できる見通しである。
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今後の研究の推進方策 |
解析結果の取りまとめを急ぎ、関連学会で成果を発表する。また、計画通り、次の感度実験を早めに行い、解析を行う。
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