研究課題/領域番号 |
16K01232
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 賢一 東北大学, 経済学研究科, 准教授 (30262306)
|
研究分担者 |
飯田 哲夫 駒澤大学, 経営学部, 教授 (20262305)
|
研究期間 (年度) |
2016-10-21 – 2019-03-31
|
キーワード | プロジェクト・マネジメント / 対数正規分布 / 納期遅れリスク |
研究実績の概要 |
平成28年度における研究実績の概要は以下の通りである. 1.プロジェクトの完了時間をプロジェクト・ネットワークの経路長の最大値の分布ととらえ,対数正規に基づく近似評価を求めた.その際,個別の作業時間の和を対数正規分布に近似するFenton-Wilkinson法において,相関構造の歪みを補正する必要があることがわかった.得られた完了時間の近似分布を用いて,期待納期遅れの解析近似を多重正規分布関数の和の形式で導出した. 2.数値実験によって近似精度の評価を行い,開発した解析近似評価関数が実用的な精度と計算効率を持つことを確認した.これまであまり着目されてこなかったアクティビティの作業時間の相関が作業時間の期待値(もしくは納期遅れリスク)に影響すること,変動係数の増加にともない近似精度がおちることなどが確認できた.また,アクティビティの作業時間を与えるパラメータに対して,期待納期遅れの解析近似の変化を解析的に導出し.パラメータの変化に対する感度分析を行った.アクテビティが20以上の場合,モンテカルロ法による感度の数値評価は不安定であり,解析評価の優位性が確認された. 3.プロジェクト・プランニングにおけるリソース最適化問題に対するタブー探索法によるヒューリスティックス解法の開発を行った.タブーリストの設計法について複数の手法を考案し,数値実験による比較を行った. 上記の成果を,日本オペレーションズ・リサーチ学会の2016年秋季研究発表会,2017年春季研究発表会,および18th Asian Pacific Management Conferenceで報告した.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初,想定していた計画スケジュール通りに成果が得られており,進捗状況は概ね良好である.
|
今後の研究の推進方策 |
1年目の実績に基づき,今後は以下の計画に従い研究を遂行する. (a) 本研究における解析近似に基づくリスク評価は,対数正規分布にもとづいている.理論的にプロジェクトの作業時間を対数正規分布で表現することのメリットは多数あり,実証的にもいくつかの先行研究で妥当であることが示されている.しかし,実際の作業時間を対数正規分布で表現するための方法が確立しているとはいえない.そこで,実際のデータに基づく分布の見積もり方法を考案するのが次の課題である.現段階で,ソフトウェア開発を行う情報システム企業の協力が得られることになっているため,そこで取得されたデータの分析を行う.具体的には,作業時間に関係する因子を統計的手法で取り出し,分布の構造を調べる.ついで,それらの因子から作業時間分布のパラメータ設定を自動的に行う方法を考案する. (b) より簡便な近似を用いたリスク評価関数を考案する.現時点の手法は多重対数正規分布にしたがう変数の最大値を直接取り扱っているのに対して,最大値の分布を解析的に取り扱いやすい分布で近似する方法を試みる. (c) 解析評価とヒューリシティックスの統合に際して,H28年度に行ったパラメータの感度分析を発展させる.現状においては,解析評価関数とパラメータの関係は非線形性が強く,そのままでは使いにくい.一定の精度を保ちつつ,操作しやすい関係式を見つけ出すことが必要である.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本科研費は年度途中(10月)に追加内定で採択されたものである.そのため,申請時のスケジュールどおりには消化ができなかった.
|
次年度使用額の使用計画 |
H28年度に計画していたものの,通知のタイミングにより実施できなかったデータ整理やプログラミングなどの作業をH29年度に実施することで次年度使用額を消化する.
|