平成30年度における研究実績の概要は以下の通りである. プロジェクトの期待遅延時間の対数正規近似の性質に関して,平成29年度から着手した数値シミュレーションによるな解析を行い,パラメータの変動に対する安定性などを検証した.その過程で,もとの同時分布から対数正規近似を導く際に,1次・2次モーメントと相関行列のマッチングでは適切な分散共分散行列が得られない場合があることが判明した.この課題に対する解決策として正定値計画法を用いた手法が有望であることがわかった.リソース配分に関するモデルについては,平成30年度はリソースの代替に関する分析およびヒューリスティクス解法の開発を行った.前者はこれまで見落とされてきたリソース間の排他的または補完的な性質を取り入れたものである.後者は,プロジェクト・ネットワーク特有の構造を生かしたタブー探索にもとづく手法を用いている. 研究期間の全体を通じて,3つの研究目的の達成状況について述べると,以下の通りである. (1)ヒューリスティックス手法による計算高速化は,タブー探索によるヒューリスティックス解法を開発し,数値実験によって有効性を確かめた.(2) リスク指標の解析評価は,対数正規近似手法を開発し,数値シミュレーションによって性能評価を行った.(3) 時間・費用・リソースのトレードオフ分析のため,リソース配分を考慮したプロジェクト・プランニング・モデルの枠組みを構築した.中でもリソースの代替効果の評価は重要な貢献である.
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