研究課題/領域番号 |
16K01233
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研究機関 | 福島大学 |
研究代表者 |
藤本 勝成 福島大学, 共生システム理工学類, 教授 (50271888)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | ゲーム理論 / 協力ゲーム / 凸ゲーム / コア / 相補性 / 提携形成 |
研究実績の概要 |
本年度は、本研究において中心的な概念である「全体的提携が維持される配分(コア)」と「全体提携が形成される配分」が、共に存在し、かつ、一致する条件としての凸ゲームとその一般化概念であるk次単調性に注目して議論を行なった。 特に、提携形成が、空間的・イデオロギー的・その他の要因で、如何なる配分においても、一部の提携形成が不可能な場合においても、これらの凸性(相補性)が維持されための条件について、考察した。ここで、凸性(相補性)は、提携拡大に必要な性質であることは明らかである。実際、提携によって、新たな付加価値が発生する場合(相補性が存在する場合)においては、その提携を形成する誘因が存在するが、プレイヤー間、もしくは、提携間に、何らかの代替的な特徴・要因が存在し、提携の結果による利得が、個別にアクションを行なった場合の各自の利得の総和を下回る場合、その提携を形成する誘因は存在しない。むしろ、個別行動が誘引される。 本研究を通して、以下のような場合においては、提携における利得構造の凸性(相補性)が保存される。つまり、「全体的提携が維持される配分」と「全体提携が形成される配分」が、共に存在し、かつ、一致することが分かった(数学的に証明された):ある2つの提携A,Bが、空間的・イデオロギー的には、提携が不可能ではない場合、それらの提携において、共通のプレイヤーが、仲介者となり、1)AとBの合併もまた、提携可能となっており、かつ、2) その仲介者の集合もまた、仲介者同士、提携を形成することが可能である。つまり、提携形成、拡大においては、その仲介的役割を担うプレイヤー、提携が、重要な役割を果たすことが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【研究実績の概要】でも述べた通り、「全体的提携が維持される配分(コア)」と「全体提携が形成される配分」が、共に存在し、かつ、一致するための条件である相補性が維持される条件の1つを明らかにした。これは、個別のプレイヤーが全体提携を形成していくプロセスにおいて、何が重要であるか、どこに注目すべきかについての、1つのヒント・方向性を与えている。また、提携形成プロセスにおいて、プレイヤーが逐次提携に参加して、提携を拡大していくプロセスだけでなく、提携同士の合併による提携拡大を議論していくプロセスについても考察していくための土壌作りにも成っている。これらの結果は、国際会議を通して公表が行われた。さらに、欧文誌における掲載が決定している。 また、代表的な協力解であるコアを非協力解として特徴づける研究が、一橋大学教授の岡田章氏らによって進められているが、本研究で議論している「全体提携が形成される配分」は、コアの1つのrefinementとなっているため、岡田らの研究を、現在、サーベイしている状況になる。コアの場合、全体提携から、離脱するか否かであるため、特定のプレイヤーについては、起点が全体提携であり、どの提携をどのような利得配分において選択するかという行動戦略であるため、ある種、ワンショットの非協力ゲーム的な側面をもっている。一方で、本研究で考察している解概念は、どの提携が形成されるか、そこから、提携を拡大するか否かの展開型の側面をもっているため、これを如何に定式化・構造化するかについて、試行錯誤を行なっている状況である。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において協力解として提案・考察している「全体提携が形成される配分」を非協力的なアプローチから考察すること(ナッシュプログラム)が、本研究の目的である。このため、【現在までの進捗状況】でも述べた通り、非協力状況下における協力発生のメカニズム、特に、本研究で考察している「全体提携が形成される配分」の、ある種の対の概念と考えられる「全体的提携が維持される配分(コア)」に関する同様の研究は、研究遂行上、様々な、示唆を与えてくれると考えられる。このため、これらの研究を十分にサーベイすることは、非常に有効であると考えられ、これを進める。 一方で、コアは、この配分であれば、全体提携を維持するか、離脱するかのワンショットのゲームとして見ることもできるが、本研究における解概念は、ある提携が形成されるか、さらに、その段階から、次の段階に提携拡大が行われるかを考察する。つまり、展開型の側面を持ち、全体提携を目指す提携形成プロセス中、それぞれの経過点は、そこを起点とするサブゲーム(ある提携が形成された後、そこから、全体提携を目指すゲーム)を構成することになる。この場合、起こりえない提携とその中間配分を起点とするサブゲームも多々存在することが予想され、サブゲーム完全均衡を考える必要がある。これらを問題に対して、直近の研究の進め方としては、まずは、逐次、1プレーヤーずつが提携に参加して、提携を拡大していく提携形成プロセスに限定して考察を行う。つまり、全体提携がABCDの場合、A→AB→ABC→ABCD, A→AB→ABD→ABCD, A→AC→ABC→ABCDのような提携拡大プロセスを、直近の考察・研究目標とし、{{A→AB},{C→CD}}→ABCDのような一般的なケースはその後の考察課題とする。
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