本研究では、研究機関(主に大学)の担う「知識人材育成」と「知識生産」の両活動間に存在する補完・対立構造を理解する目的で、研究機関に所属する知識人材を世代毎に分類した上で、各世代による知識生産、及び、人材育成への関与を具体的に分析し、さらに、その短期的・長期的影響を評価する目的で、各世代による知識生産の状況を10年間程度追跡した。その結果、人材育成と知識生産の両活動には補完・対立関係が存在し、この関係は時間軸で変化すること、世代毎に異なることが示された。結果、往々にして知識生産が人材育成に比べて優先され、即ち、現行のシステム設計の下で、長期的な知識生産の安定性に課題が存在することが示唆された。
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