持続可能な社会の発展のため、企業は経済効率性の追求とともに、環境効率性や企業の社会的責任(Corporate Social Responsibility: CSR)に配慮した経営が求められている。本研究では、それら経済性や環境性、CSRへの取り組みを、企業活動の成果として取り入れた、新たな統合的経営効率性分析手法を数理モデルの応用により構築し、実際に企業の経営情報に適用することで、企業経営の持続可能性評価への応用を議論してきた。 最終年となる平成30年度は、継続的に行ってきた企業データの構築を一通り完了するとともに、効率性指標をモデルの中で明示的に用いるRadialモデルとそれ以外のNon-radialモデルの双方の特長を組み合わせた中間的なモデルとして、新たなData Envelopment Analysis(DEA)モデルを提案した。 分析手法に関する研究と応用研究をとりまとめ、査読付き国際ジャーナルに2本の論文を掲載した。具体的には、提案した新たなモデルを日本の代表的な製造業企業とサービス業企業のデータに適用し、手法の実用性を示すとともに、企業の統合的持続可能性評価の観点から、日本企業の生産性向上に関する議論を展開した。また、当該モデルを東京都23区の付加価値額と環境負荷データを用いた分析に適用し、環境政策への応用に関する議論を行った。 さらに、日本の製造業企業におけるCSRへの取り組みが、経済効率性や環境効率性に及ぼす影響について、社会的責任投資(Socially Responsible Investment: SRI)への株式組み入れやCSRガイドラインの採用状況を指標化する方法を検討し、それらの指標が効率性に及ぼす影響を定量的に分析した結果を国際学会で発表した。
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