研究課題/領域番号 |
16K01241
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
軽野 義行 京都工芸繊維大学, 機械工学系, 准教授 (80252542)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | システム工学 / モデル化 / アルゴリズム |
研究実績の概要 |
製造設備がインターネットに繋がれたとき,製造プロセスを常時モニタリングしてデータを蓄積し,異常があれば自動的に検知する,というのは狭義ながら,その活用形態の一つである.組合せ計量システムは,ピーマンを筆頭に,スナック菓子や野菜サラダといった食品,さらに現在では薬剤,文房具,ネジなどの小型部品にまで対象を広げている定量パッケージングのためのシステムである.日本発の組合せ計量システムは世界中で稼働しており,対象製品のみならず,地理的にもその影響範囲が拡大している.そのため,インターネットを活用した,特にソフトウェア面でのシステム導入時の立ち上げ作業の効率化に関心が寄せられるのは自然な流れである.更に言えば,組合せ計量システムに限らず,そのような性格を持つ製造設備には同様の関心が寄せられるだろう.蓄積したデータをシステム間の相互連携強化に活用しようとすれば,データからシステムの設定や運用にとって有益な情報を引き出す必要がある.本研究課題は,そのための代表的アプローチの一つとして,システム動作を表現するための数理モデリングを取り上げて,最適化モデルの構築及びその数理構造の解明を目的とする.ここでは特に,従来の機種毎の最適化モデルに関する成果を踏まえて,アルゴリズム設計における近似精度保証の観点から,包括的な最適化モデルの数理構造を明らかにしている.研究期間二年目は,二品種アイテムの二目的部分和最適化モデルを重点的に検討し,定数近似精度保証の入力条件,合計重量近似スキームの設計,派生モデルの構築など,一定の成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
数理モデリングの有用性を確認し,近似アルゴリズムの設計手法を確立していくための一つの成果として,合計重量と優先度和という二目的からなる二品種アイテムの部分和最適化モデルに対して,ある実用的な入力条件のもとで,定数精度保証を持つ近似解の存在を明らかにした.アルゴリズムはグリーディな発見的手法であり,低次の多項式手間で動作する.定量パッケージングという組合せ計量システムの役割からすれば,合計重量の近似比2は素直には喜べず,アイテム重量に関して特定の入力条件を指定しない場合,優先度和の近似比はインスタンス依存である.しかしながら特に後者の結果は,ある意味で,包括的な最適化モデルの数理構造の解明の必要性を明確にしたとも言える.また,当該年度においては,二品種アイテムの合計重量最適化モデルに対する近似スキームも設計した.現在のところ,計算手間を可能な限り抑えた形で提示していないが,まずは多品種アイテムの最適化モデルに対する近似スキームの存在自体に大きな意義があると思われる.以上の成果は,関連する国際会議において報告した. さらに,派生的な有向二部グラフ上のアイテム収集に対して,最適化モデルの再構築,発見的アルゴリズムの設計,及び実装によるアルゴリズムの性能評価をおこなった.この最適化モデルにより,アイテムの選択に関するある種の競合状態の解消案を表現できる.その成果は,雑誌論文や学会発表において報告した. 以上より,本研究課題は現在までおおむね順調に進展していると言える.
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今後の研究の推進方策 |
単品種アイテム並びに二品種アイテムの二目的部分和最適化モデルに対する数理構造の解明及び近似アルゴリズムの設計について一定の成果が得られたので,今後はその最適化モデルを一般の多品種アイテムに拡張して研究を進める.一つには,合計重量近似スキームの設計がある.一般の多品種モデルにおいても,合計重量に対する定数近似精度保証の存在はほぼ間違いないと思われるので,アイテムのすべての品種に対して一定率以下の誤差を割り振ることができるかどうかの検討に,より多くの労力を振り向けたい.もう一つには,一般の多品種モデルに対するアルゴリズムの実験的評価の結果の整理がある.並列アルゴリズムは視点が異なり興味深いので調査等は引き続きおこなう.逐次アルゴリズムの実験的性能については,まとめの作業をおこなう.これらに関して,基盤アルゴリズム技術はこれまでと同様に動的計画法となる予定である.また,有向二部グラフ上のアイテム収集問題等,将来の応用領域の拡大を見据えて,派生モデルの構築や改訂にも可能な限り取り組む.なお,派生モデルの近似アルゴリズムの設計においては,理論上定数精度保証を許さないものがあるかもしれない.そのような派生モデルについては,同等な近似レベルのモデルの調査を併せて行う予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表に係る旅費のうちの航空運賃について,予想以上の大幅な割引が受けられたことが,次年度使用額を生じさせた主な理由である.該当する研究成果発表の時期が年度末に近かったこともあり,その他の経費に少しずつ追加の厚みを持たせて当該年度の研究を一層促進するような微調整を行う時間も作れなかった.しかしながら,この次年度使用額は,何らかの研究項目の実施ができなかったために生じたものではない.したがって,次年度では,研究成果発表の機会を多く持つことができるし,あるいは,計画以上の進展が見込める研究項目の経費に追加を行うことができることになる.現状では後者が得策のように思われるが,次年度の研究成果が早い時期に得られるようであれは,そのまま旅費の一部として使用する.
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