研究課題/領域番号 |
16K01245
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
宇野 剛史 徳島大学, 大学院理工学研究部, 准教授 (50363023)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 立地 / 不確実性 / 日常生活行動線 |
研究実績の概要 |
研究初年度において,地域住民の日常生活行動線(動線)および交通量に関する不確実性を考慮した商業施設の立地を考察した研究を遂行した.店舗などのように何らかのサービスを提供する見返りとして利益を得る商業施設において,どこに立地するかはその利益に大きく影響を与える.施設立地に関する数理モデルにおいて,施設の潜在的利用者となる地域住民は一般に交通発生源(TG)として集約することで表される.TGとは多くの人々が集まり出入りする場所を意味し,例として鉄道の駅,バスターミナル,ショッピングモールや大型交差点などが挙げられる.TGの周辺では地域住民が多く通ることから多くの売上が見込まれる一方で,一般にテナント料も相応に高くなる傾向にあることから必ずしも良い立地とは言えない. TG間には地域住民の集団による行動線,すなわち動線が発生することが知られている.動線はTGとの関連で,主動線(2つのTG間に発生),副動線(主動線に付随して1つのTGを端として発生),および浮遊動線(TGとは無関係に発生)の3種類に分類される.一般に主動線は他の動線と比べて規模が大きいことから,本研究では主動線を中心に考察した.動線上ではTGから離れていても往来する地域住民が見込まれることから,施設の立地候補となり得る. 本研究では動線を考慮した施設立地モデルを構築した.また,TGおよび動線における交通量は立地の対象となる地域を調査することで得られるが,その結果には不確実性が存在する.本研究では地域住民の交通量を確率的不確実性と見做してモデルを構築することで,新しい施設立地モデルを提案した.利益最大化を目的とする最適立地問題として定式化し,効率的に求解するためのアルゴリズムを構築した.さらに,数値例に適用することで,求解アルゴリズムの有用性を示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度では,立地候補となる地域に存在する住民の動線および視界性を表現するモデルを構築することを当初の目標としていた.平成28年度の研究では,都市部に在住する地域住民の交通手段を主に徒歩とみなした場合における商業施設の立地について考察した.動線をモデル化するためには動線に含まれる不確実性を表す必要があるが,本研究では特に天候や景気など未解明の現象により事前に予測しきれないことから生じる不確実性を表すために確率的不確実性を用いた.また,視界性については立地する施設に対する広告効果や障害物の有無等も考慮する必要があるものの,施設の周辺を何度も通行する利用者に対してであれば看板等により周知できている状況を仮定した.これらの設定に基づいて施設立地モデルを構築することで,利益最大化を目的とする最適立地問題として定式化できた.解くべき問題は確率計画問題として与えられ,効率的に求解するためのアルゴリズムを構築した.さらに,数値例に適用することで,求解アルゴリズムの有用性を示した.考慮した施設立地は汎用的に応用可能であり,膨大な計算コストをかけずに求解できることから,研究の進捗状況はおおむね順調に進展していると考えられる.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度では,地域住民の動線や視界性をより現実に即して表現した数理モデルを構築することを目標とする.需要の不確実性については前年度に導入した確率的不確実性に加えて,人間の評価に含まれる曖昧さを考慮する必要があることから,これらの不確実性を同時に扱える数理モデルを構築する.また,前年度に考察した動線は比較的汎用的に応用可能であるものの,特殊な施設の立地を考察する場合にはさらなるモデル化のための工夫が必要となる.例えば,ガソリンスタンドの立地を考える際には,施設の潜在的利用者は自動車に乗っており,進行方向の左右では施設の評価および視界性が異なると推測される.このような施設特有の状況を考慮することで,より現実に即した商業施設の立地について扱える数理モデルを構築する.前年度と同様に施設から得られる利益最大化を目的とする最適立地問題として定式化する.得られた問題は大規模であることが予想されることから,最適解を効率的に導出するための近似解法アルゴリズムを構築する.さらに,立地の現実例やシミュレーションにより作成された数値例に応用することで,得られる立地の有効性を示す.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究遂行にあたり大規模かつ複雑な最適化問題を求解する必要があることから,20万円前後で入手可能な商用ソルバーの購入を予定していた.前年度において所属機関予算から学内教育目的でGurobi Optimizerのライセンスを購入したところ,本研究においても求解用として使用可能な目途が立ったことから,その分における次年度使用額が生じている.また,平成29年3月に学会発表のため出張に行ったが,支払いが完了していないため未使用額が生じている.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度には国内会議で3件,国際会議で1件の研究発表を予定しており,その参加費および旅費としての使用を予定している.また,論文投稿による別刷り代を予定している.さらに,研究遂行にあたり大規模かつ複雑な最適化問題を求解する必要があることから,計算環境の充実を図るための補助となる消耗品(ディスプレイやデータ保存用HDDなど)の購入を予定している.また,平成29年3月出張分については,4月に支払いが完了する予定である.
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