研究3年目において,施設の潜在的利用者となる地域住民の日常生活行動線(動線)を推定することで,新しい施設立地モデルを構築する研究を遂行した.動線は一般に地域調査によって測定されるが,地域住民ごとの移動を追跡する必要がある.このことは,従来の施設立地モデルより用いられている駅や大型交差点などの交通発生源における交通量の測定より,はるかに多くの費用および労力が生じることを意味する.さらに,動線は測定する日時によって交通量および移動方向に差異が生じることから,データを得るためには長期間測定する必要がある.
本研究では,交通発生源の位置および交通量から動線の発生を推測する数理モデルを構築した.本モデルでは,相異なる2つの交通発生源間の距離および交通発生源のもつ交通量の大きさにより動線が発生するか否かを判定している.さらに,動線のもつ交通量の大きさは交通発生源のもつ交通量の大きさに依存して決まると仮定している.これらの推測に基づき施設立地モデルを構築することで,利益最大化を目的とする最適立地問題として定式化できた.解くべき問題は非線形計画問題として与えられるが,効率的に求解するためのアルゴリズムを構築した.さらに,数値例に適用することで,求解アルゴリズムの有用性を示した.考慮した施設立地は汎用的に応用可能であり,膨大な計算コストをかけずに求解できることから,実用的な立地が得られる数理モデルを構築できたと評価できる.
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