研究課題/領域番号 |
16K01247
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
瀬尾 明彦 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (80206606)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 人間工学 / 反復動作 |
研究実績の概要 |
1)前傾の程度に違いのある複数の保持姿勢作業における負担評価の実験において、その順序を入れ替えた場合の腰部の負担の推移を検討した。評価は筋電図と主観と姿勢により行った。結果的に筋電図と姿勢(体幹前傾角)には明確な順序効果の影響はとらえられなかったため、主観を中心に評価することとした。主観は作業時間とともに経時的に増加する傾向があり、それが姿勢の種類を変えると一時的に軽減する傾向が明らかになった。その際、前傾が深く腰部への負荷が高い作業が持続したあとに前傾が浅く負荷が軽い作業が続くと特に大きな軽減効果が表れることが明らかになった。また、主観に基づく評価指標として、全体の平均負担度、経過中の負担度の最大値、最終の負担度の3つが、評価指標として利用できることが明らかになった。 2)上記の負担の順序効果の影響を理論的に検討するため、生体力学モデルによるトルク比を用いた筋疲労モデルの適用可能性を検討した。これは本来2年度目に行う予定だったが、1の結果をより深く理解するため、考察の過程検討を追加することにした。 3)作業種類を変えた場合の繰り返し持ち上げ姿勢での負担評価実験として、前屈持ち上げ、中腰持ち上げ、腕持ち上げの3種類の持ち上げ姿勢の影響を調べた。いずれの作業も部位に応じた主観的負担感の増加が明確にとらえられたが、持ち上げ動作による作業の回数やトルクの累積負荷に応じた負担感の増加に加え、単に時間的に増加する負担成分があることも明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り、順序効果の実験による検討が行えたので、おおむね目的は達成されたとみなしている。評価指標としては、今回は実験リスクも考慮して筋活動としては軽負荷の作業としため、姿勢や筋電図には明確な傾向は現れなかった。特に筋電図は、長時間実験になると、たとえば脊柱起立筋だと背部を湾曲して筋活動が低下しやすい作業姿勢を選択するといった様子が確認され、筋電図評価が困難であった。また、単に実験の経過時間が延びることによる負担感・疲労感の増加の影響が予想よりも大きかった。今後はそれを考慮したモデル化と実験が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
予定通り次年度は、タスク順序効果を評価する手続きの定式化を行う. 1)負荷量データの筋疲労モデルによる定式化の検討:ある筋活動のタスクによって蓄積した疲労の回復には,そのタスクの筋活動度とその持続時間に応じた回復時間が必要である.つまり,高い負荷が持続的に長い時間継続されるほど負担度は高くなり,いかに高負荷作業と低負荷作業を分散して組み合わせるかが重要である.ただし,極端に負荷の異なる作業を頻繁に切り替えることは現実的ではないし,高反復動作による負担も増大してしまう.これらの現象をモデル化する方法として、筋疲労モデルがある。単純なものは筋の疲労蓄積を指数関数近似するもので、これはデータをローパスフィルタにかけるものに相当する。もう少し複雑なモデルとして疲労と回復の要素を別な係数で増減させる線形微分方程式で表記できるものもある。これらのモデルを参考に、順序効果が検討できる筋疲労モデルと定式化を行う。 2)二値化した負荷量データによる複雑なタスクの作業順序の定式化:上記のモデルは、逐次的に微分方程式を解いていくものなので、現実の作業の組み合わせが多い場面に直接当てはめるのには処理時間の点で限界がある。そこで、作業負荷量を高・低の2値にすることで、組み合わせ最適化問題に置き換えて最適な順序効果を検討する方法を検討する。本年度の実験結果も踏まえると、負荷の高い作業が継続することは問題であるが、負荷がある程度持続してそのあと低下した場合に一時的な主観の改善があることなど、特徴的な順序効果を示す特徴が明らかになった。これらを組み合わせの絞り込みに利用することを予想している。
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