研究課題/領域番号 |
16K01248
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
八木 恭子 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (80451847)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 戦略的延滞債務 / 企業ファイナンス / 計算アルゴリズム / クレジットデフォルトスワップ / デフォルト |
研究実績の概要 |
2人の意思決定者が,2次元で記述される経済の下で,互いの意思決定の影響を受けながら,最適戦略を求める問題として,債務を相互に保有する企業の戦略的延滞に関する分析を行った.戦略的延滞とは,債務不履行に伴う経済損失を盾にして,貸し手から譲歩を引きだそうとする債務者の戦略的な行動で,支払い金利や返済額の延滞や減免提案をいう.この問題は企業ファイナンスの分野で多く研究されているが,これまでは1次元1人問題として扱われてきている.本研究では,債務を相互に保有する状況を2次元2人問題としてモデル化を行い,株主が株式価値を最大にするような戦略の下で,返済の減免提案として,債務を株式へ交換する交渉について分析を行った.2次元問題の数値解法としてPSORアルゴリズム(Projected Successive Over-Relaxation)を応用して,債務不履行において債務者のどちらが先に延滞交渉に入るか,また延滞交渉は同時に起きるのかを明らかにし.最適戦略を分析した. 多次元問題への拡張として,複数の企業間でのクレジットデフォルトスワップ(CDS)の持ち合いを考慮したデフォルトの分析にも取り組んだ.満期のみでデフォルトが起こるBlack and Cox モデルの下で,CDSの持合いに関するモデル化とアルゴリズムを提案し,持合いにおけるデフォルトの波及効果を分析した.シミュレーションによって,債券の持合いの下ではデフォルトの波及が抑えられるのに対し,CDSの持合いの下ではデフォルトが推進されることを数値的に示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
債権の戦略的延滞問題については,順調に遂行しているといえる.今年度は先に取り組む予定であった参入・撤退問題については取り組めていないが,それ以外のさまざまな分析から多くの知見が得られており,おおむね研究は順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後はまず,2次元2人問題として,企業合併に関する分析を行う予定である.敵対的買収のタイミングとその利得,公開買い付けの実施タイミングとその利得,これらは買収者および被買収者の2人問題をモデル化し,買収の過程で相互に株式を持ち合う状況をこれまでの問題の応用として,取り組む予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は計算アルゴリズムの開発において,既存のPCを使用したため,予定していたハイスペックデスクトップPCを購入しなかった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度、ハイスペックPCを購入することで,より複雑な計算を行う予定である.
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