研究課題/領域番号 |
16K01255
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研究機関 | 麗澤大学 |
研究代表者 |
籠 義樹 麗澤大学, 経済学部, 教授 (90293084)
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研究分担者 |
持木 克之 麗澤大学, 研究センター, 研究員 (10725633)
長岡 篤 麗澤大学, 研究センター, 研究員 (40706561)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 人口減少 / 少子高齢化 / 基礎的インフラ / 維持管理コスト / 上水道 / 南房総市 |
研究実績の概要 |
一都三県を対象としたGISデータを用いて1kmメッシュ毎に把握した基礎的インフラの維持可能性に関する分析結果を踏まえ、平成30年度は一都三県の市区町村毎に人口動向と基礎的インフラの整備状況・立地の分析を行った。その結果、2010年の人口を100とした2050年の人口密度指数と基礎的インフラの立地基準との関係から、基礎的インフラの維持が困難となる市区町村を把握し、現在は生活利便性が良い地域においても、人口減少により将来は基礎的インフラの維持が困難となる地域があることを示した。 また、平成29年度に行った千葉県南房総市から他の市区町村に転出した住民を対象としたアンケート調査結果を踏まえて、平成30年度は南房総市へ転入した住民を対象としたアンケート調査を行った。アンケート調査対象者は、平成28~平成29年度に他の市区町村から南房総市へ転入した1,104人とし、平成30年8月にアンケート調査票を住民の現住所へ郵送し、同年10月末までに344人(回収率30.9%)から回答があった。 基礎的インフラの維持管理コストの推計については、これまでの研究で算出した上水道の費用関数を東京近郊の1都3県の1kmメッシュの地区に共通して適用できる関数に改良し、2010年時点の地区毎に当該地区の上水道供給の維持管理コストを算出した。その上で、上水道供給に要する施設規模が変化しないこと等の前提条件を設定し、将来人口推計結果を用いて、地区毎に人口1人当たりの将来の上水道の維持管理コストを算出した。 この結果を用いて、人口の増減率、上水道の維持管理コストの増減率により地区を分類した。これにより、人口減少により人口1人当たりの上水道の維持管理コストが大幅に増加する地区を把握することができた。一方で、人口が増加する地区においても人口1人当たりの上水道の維持管理コストが増加する地区があることが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
他の市区町村から南房総市へ転入した住民を対象としたアンケート調査では、回収した344人の回答結果を入力・集計し、性別や年齢、世帯構成といった回答者の属性による違いとともに、居住していた都道府県や転入前後の満足・不満足の違い、今後の南房総市への居住認識などを明らかにするための分析を進めた。これにより、転出者と転入者の双方について、人口減少に悩む地域への居住に関する住民の意識を把握することができるようになった。 また、維持可能性評価が必要となる基礎的インフラ6施設を抽出(平成28年度)し、そのうち上下水道の費用関数を算出(平成29年度)した。そのうち、面的に大きく広がり、普及状況が最も高い上水道に着目し、一定の条件下で地区毎の人口1人当たりの維持管理コストを算出し、維持管理に困難が生じ得る地区を特定(平成30年度)した。 この結果を踏まえ、基礎自治体の上水道の施設に関する実際のデータを用いた詳細な分析を実施するため、前年度に特定した調査協力が得られる基礎自治体で条件に合致する基礎自治体から詳細なデータを入手した。 さらに、人口減少下であっても、需要が増加し必要不可欠な施設である火葬場について、東京圏の火葬場の移転事例を把握し、火葬場の適正立地に必要となる要件等の把握をする事例調査の対象を絞り込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
南房総市へ転入した住民を対象としたアンケート調査結果の分析を進め、自ら望んで転入した住民とやむを得ず転入した住民との比較を中心に、同市への転入理由や転入前後の満足度の変化、行政サービスの利用状況から、南房総市における居住認識を明らかにする予定である。そして、平成29年度に行った南房総市から他の市区町村に転出した住民を対象としたアンケート調査結果と合わせて、南房総市や同様の人口減少自治体に求められる定住人口確保の施策を検討する。 また、GISデータを用いた基礎的インフラの維持可能性に関する分析結果を踏まえ、特にバス停を対象に人口動向との関係を分析し、将来どのような地域で基礎的インフラの維持が困難になる可能性があるのか明らかにし、昨年度までの分析を踏まえてまとめる。 基礎的インフラの維持管理コストの推計については、これまでの研究成果を踏まえ、地区毎の人口1人当たりの上水道の維持管理コストの推計の精度向上を図る。設定した前提条件では人口減少による上水道の維持管理コストの変化が大きくならなかった地区について、上水道施設の実際のデータを用いて、より詳細な分析を行う。その上で、当初設定した前提条件の見直し等を行い、1都3県の地区毎の人口1人当たりの維持管理コスト推計の精度向上を図る。 決算統計資料が十分でない上下水道以外の基礎的インフラ(廃棄物処理、バス、道路、治水施設)については、調査対象とする基礎自治体の維持管理の実態の把握をし、個別に費用の推計を行えるよう検討を進めていく。 さらに、人口減少下であっても、需要が増加し必要不可欠な施設である火葬場について、事例調査を進め、火葬場の適正立地に必要な要件等を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初GIS利用のためのPCを導入する予定であったが、アンケート調査に想定以上の費用が掛かり、PCのための予算を確保できなかった。そのため、繰り越しを行い、翌年度分の助成金と合わせてPCの導入を行う。
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