研究課題/領域番号 |
16K01259
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研究機関 | 成城大学 |
研究代表者 |
増川 純一 成城大学, 経済学部, 教授 (30199690)
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研究分担者 |
黒田 耕嗣 日本大学, 文理学部, 教授 (50153416)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 金融時系列 / マルチフラクタル / Random cascade model |
研究実績の概要 |
本研究は,株式市場において,ニュースなどの外生的直接要因や,ニュースがもたらす印象の蓄積によって市場参加者間に醸成されたムードで内生的に引き起こされる市場の不安定化のメカニズムとそのプロセスを明らかにするものである。 本課題研究では市場が不安定化する過程での価格変動と市場参加者の発注行動を特徴づけ、大規模な価格変動の予兆は,価格時系列,売買注文の時系列(オーダーフロー)のどのような特徴に現れるのか,それはどのように変化していくのか,株式市場の取引データを用いた解析から明らかにする。その際、株式市場を異なる取引時間スケールを持つ複数の投資主体の集合とみなし,それらの投資主体の相互作用の結果として生じる非線形性(マルチフラクタル性)に着目した分析を行う。 Random cascade modeは間欠性やマルチフラクタル性を含む金融時系列の多くのStylized factsを説明できる優れたモデルであるが、前年度行なった2008年の株式市場の大暴落を含む期間の金融時系列への応用の妥当性の検証から、スケール間のカスケードを表す確率変数の独立性は成り立っていなかった。今年度は、乗算的な確率過程であるRandom cascade modeに加法的な項を加える拡張モデルを提案し、その検証を行った。前記データによる実証研究と、モンテカルロ・シミュレーションによる検証によって、提案モデルは本研究課題で示した全ての実証結果と整合的であった。これらの成果は、国際会議や国内の学会で報告し、経済系の論文誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
金融時系列の実証分析、数理モデルの構築はほぼ順調に進んでいるが、オーダーフローの分析がやや遅れている。理由は、実証研究の結果が通常のRandom cascade modelでは説明不可能であったため、数理モデルを拡張する必要があり、その構築に時間がかかったためである。
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今後の研究の推進方策 |
東証のティック・データを用いて,市場が不安定化する過程における構築した数理モデルが含むパラメータの変化を追跡する。パラメータの同定は最尤法により行う。同定に必要なデータ数を確保できる最小の期間幅を定め,期間を移動しながらパラメータの変化を追う。 また、構築したモデルの数理解析により,モデルが含むそれぞれのパラメータが株価変動の時間発展にどのように寄与するのか明らかにする。また,必要によっては,パラメータの値を変えて数理モデルの網羅的なシミュレーションを行う。上記の,東証データを用いたパラメータの時間発展と比較することにより,取引時間スケールの異なる投資主体の不安定化の各段階における寄与および相互作用を分析し,市場が不安定化するメカニズムを明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
・論文の投稿料の支払いが次年度になったため。 ・データの購入の期間をまとめて次年度購入するため。
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