研究課題/領域番号 |
16K01261
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
金子 雅明 東海大学, 情報通信学部, 准教授 (30454036)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 医療安全 / 業務プロセス改善 |
研究実績の概要 |
本研究における最終的な目的は,医療の質・安全を保証するための医療業務プロセスの診断方法の開発である.そのための具体的な実施項目として,①高いパフォーマンスを生み出す一般的な医療業務プロセスモデルを確立する,②①で確立したモデルを用いて医療業務プロセスを的確に診断するための手引きとして,診断フローチャートを提案する(これは,①で確立した一般モデルが有する要素,側面,特徴・性と診断対象業務プロセスの間の差異を見つけるための具体的な視点,及びその視点をどのような順序で用いるべきかを整理し,可視化したものである),③そして医療者が②の診断フローチャートに沿って診断し,診断の経過や結果を記録できるツールとして,医療業務プロセス診断・分析テンプレートを最終的に開発する,の3点を挙げている. 1年目(2016)に①の業務モデルの確立,2年目(2017)には②の業務モデルに基づいた診断フォローチャートと③医療業務プロセス診断・分析テンプレートの素案を提案した.さらに追加になった新規課題として,診断・分析を行う前に必要となる現状把握シートの開発が明らかになり,その開発も行った. 本年度(2018)では,昨年度に開発した医療業務プロセス診断・分析テンプレート,及びその前段階で使うことになる現状把握シートの有効性を検証するために,4医療機関(明石市市民病院,川口市立医療センター,国立病院機構埼玉病院,前橋赤十字病院)に適用した. 明石市市民病院では医療安全推進委員会メンバー中心(19名)に対して勉強会を実施し,「シリンジポンプ流量変更間違い事例」で分析した.川口市立医療センターでは各部署管理者(25名)を対象に勉強会を実施し,希望部署5部署各1事例で行った.埼玉病院では全18部門の現場管理者を対象に各1事例,そして前橋赤十字病院では医療安全メンバーを中心に重要事故1事例を対象として適用した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り,4医療機関から研究協力が得られ,本年度は複数の医療機関において提案方法の有効性の検証を行うことができた. しかしながら,検証結果からいくつかの改善点も明らかになっているので,それを次年度(最終年度2019)に実施しておく必要がある.また,4医療機関において本提案法を用いる対象者や院内での活用方法を把握でき,互いに共通点や相違点があることがある程度見えてきているものの,その整理がまだ完了していない.
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今後の研究の推進方策 |
来年度は本研究の最終年度に当たるため,有効性・汎用性のある医療業務プロセスの診断方法を最終的に取りまとめることが重要となる.そのためには,本年度に明らかになった次の2点を実施する. ・本年度の検証結果を踏まえた提案法の改善とその検証 ・院内での円滑な導入・推進のための本提案法の活用方法の整理 研究体制については,本年度に研究協力頂いた4医療機関に引き続き協力をお願いできるようにしておく.上記2点に加えて,本提案法の使い方や注意事項をまとめた教材の整備についても行う必要があると考えている. これらによって,プロセス分析・改善に不慣れな医療者でも医療業務プロセスに潜む問題点を的確に発見し改善できるようになり,結果として医療の質・安全に寄与できると考えられる.
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