昨年度において,医療の質・安全を保証するための医療業務プロセスの診断方法として,診断・分析テンプレート,及びその前段階で使うことになる現状把握シートの有効性を4つの病院で検証した.検証結果より,診断・分析テンプレートの有効性は確認できたが,後者の現状把握シートについては改善すべ課題があることが明確となった.その課題とは,現在提案している現状把握シートは48の質問項目によって系統的に医療事例の事実や発生状況を的確かつ抜けもれなく把握できるようになっているという点では有用であるが,医療者が記載を行うために長時間かかってしまい,病院内で実践的に活用するには課題があった.そこで本年度は,現状把握シートの記載事項の中でも必要最小限の項目に限定した簡易版・現状把握シートをさらに開発して,ある1病院で検証を行うこととした. 具体的な研究方法としては,①昨年度の検証結果に基づいて簡易版・現状把握シートの素案を開発,②開発した簡易版・現状把握シートをある病院の各部門で発生した事例に適用,③適用した結果から,そのシートの記載内容の抜け・漏れにどのようなものがあるかを抽出し,④③の結果に基づいて改善することとした. 研究結果として,48項目から必要最低限の14項目に絞った簡易版・現状把握シートを開発し,34事例に適用した.その結果,記載内容の抜け・漏れについて70か所を抽出し,簡易版・現状把握シートを改善するとともに,通常の現状把握シートとの使い分け方法についても提案した. この研究成果に基づき,別の複数病院においても簡易版・現状把握シートを看護部や検査部等に広く展開し,その有効性とともに汎用性を確認できた.
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