研究課題/領域番号 |
16K01263
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
香取 照臣 日本大学, 理工学部, 准教授 (20233835)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 列車ダイヤ / 運転整理 / 車両運用 / ダイヤ評価 / 路線モデル / 時刻表データ形式 / 進路表現 |
研究実績の概要 |
鉄道の運行に際し、輸送障害によるダイヤ乱れが発生した場合の運転整理ダイヤ(平常ダイヤに戻していくための過渡的なダイヤ)を、運用している車種を考慮して最適解を自動的に作成するアルゴリズムを明らかにする研究をしている。 鉄道の複数事業者間で相互直通運転をしている現場で問題になっているのは、路線や、路線途中で条件が変わる場合の車両運用の運転整理への組み込みである。例えば途中から非電化となる路線では、電化区間に気動車の運用は可能であるが、非電化区間には電車の運用はできないということである。特に運転整理ダイヤにおいてはイレギュラーな状況下のため、整理後にA社の車両が、A社でも所在を把握しないままB社の車庫に入っている、ということもしばしば発生する。 コンピュータサイエンスの観点から問題点を挙げると、以下のようになる。 1.列車運行の組み合わせが多数存在し、組み合わせ爆発が生じる。2.短時間で解を得る必要がある、すなわち計算量の削減の必要性。3.評価すべき観点が多数存在し、相互に相反するものを含むため、この整理。4.相互直通運転等で、車両に関する情報を付加する必要性。 平成28年度は初年度であることから、このうちの4.を中心に研究を行い、問題を解決するためのデータ設計と実際にデータを準備(作成)し、これらのデータ形式に基づく運転整理手法について検討した。また3.についても、一般的とはいえいくつかの評価を行い、有効性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度は主に問題を解決するための、本研究で使用するデータ形式を定義し、 ・相互直通運転等で車種を考慮する必要のある運転整理ダイヤを表現するに適した、列車データと路線データ形式の確立 ・列車ダイヤの評価基準の検討 を行った。 車種の考慮のために、スジのデータ形式には運用される列車編成を主体としたものを採用した。また、ダイヤグラム上だけでは駅の使用番線は区別出来ないことから、モデル路線の線路配線もデータとして用意・使用する必要がある。線路配線データを有向グラフとして表現するとブツ切りで意味をなさなくなってしまうため、一列車の始終点間で走行する進路をリンクの集合とし、これに運用可能な車種の情報を付加して、車種の考慮を可能にした。定義された列車ダイヤのデータ形式に則り、典型的なモデル路線として、途中駅折り返しで異なる車種が運用されるものについて、線路配線・進路データと、計画ダイヤデータを準備した。また、データ形式の定義・準備とともに、列車ダイヤの評価基準の整理・検討を行ったが、これについては現在のところオーソドックスな駅ごとの平均運転間隔、運転間隔の分散の検討にとどまっている。しかし評価値としての意味と適用可能性を検討し、実際に算出したところ、運転整理の良否を良く表したものであることを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は、これまでに定義したデータ形式と、準備したモデル路線のダイヤと線路配線・進路データを用いて、全探索により運転整理ダイヤを作成していく。 1.組み合わせ爆発が起きない大きさでの、全探索による普遍的傾向の抽出。 2.列車ダイヤの評価基準の検討と確立。 これまでに用意したモデル路線は検証が容易な規模であるため、全探索での取り扱いが可能である。作成する運転整理ダイヤは、やはり既に検討した評価基準の何に着目するかで異なる解となるはずである。着目要素の異なる複数の解を、この段階で算出可能なすべての評価値を求め、比較検討を行う。この結果、冗長あるいは相関のある評価項目の統合を行い、路線のもつ条件と併せて検討することで、有効な運転整理ダイヤの普遍的な傾向を抽出する。これと並行して、列車ダイヤの評価基準の整理・検討を行う。列車の区間ごとの乗車率、列車ダイヤ(時刻表)の利便性、安定性、単純性といった観点から、それを構成する施設(ハードウェア)要素との関係について分類し、評価値としての意味と適用可能性を検討し実際に算出しての比較検討も行う。構成要素と利便性等の評価指標から、作成した整理ダイヤも含めた複数のダイヤに対して実際に評価値を算出し、評価値がダイヤの性質をどの程度表せるのか、感度は充分なのかの検証を行う。 研究課題のタイトルにもある「車種を考慮した」は、輸送障害で不通になる以前と復旧して計画ダイヤに戻った後で、車種を考慮してスジをつなぎかえることを意味する。このスジのつなぎかえをどのように組み合わせたら高い評価値が得られるか、は大きな問題である。モデル路線は列車本数も含めて検証が容易な規模であるので、この組み合わせについても総当りで行い、条件と有効性の関係を検証する。これらの検討を、必要に応じて環状線やY字線で異なる車種が運用される路線等に適用する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究に使用する計算用コンピュータなどのまとまった物品を購入するには金額が不足しており、また次年度に予定がある研究課題に関する出張旅費も不足が見込まれることから、繰り越したうえで使用することとしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
平成29年度に予定している研究課題の成果発表のための出張において、平成29年度の旅費の助成額と合算して使用する予定である。
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