研究課題/領域番号 |
16K01264
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
浦谷 規 法政大学, 理工学部, 教授 (80126268)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2020-03-31
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キーワード | 年金基金のリスク管理 / 長寿スワップ / 最小マルチンゲール確率 / 金融工学 |
研究実績の概要 |
年金基金の収支変動は、生存者数のプロセスが計数過程であるから、ジャンプを含む確率微分方程式でモデル化される。年金積立金に対する非完備市場におけるリスク最小化はヘッジポートフォリオの2乗誤差に対してリスク中立確率による期待値を最小化する方法がある。2018年度の研究は、長寿スワップを用いたポートフォリオに対する最小マルチンゲール確率 (Minimal martingale measure )を用いたリスク管理方法がそのジャンプを含むリスク最小化への解決策としてEURO2018学会で発表した。そこで用いた方法は最小マルチンゲール確率を利用する局所最小化 ( Local Risk Minimization )法である。そこには、価格決定のためのリスク中立マルチンゲール確率と現実に観測される生存確率の差が非完備な年金ポートフォリオに対してリスクの過小評価をもたらすことを明らかにした。この問題点は、金融工学の基本的問題から派生する「保険における価格決定のためのマルチンゲール確率と観測される生存確率の差が年金ポートフォリオに如何なる影響をもたらすか?」という問いである。この問題の対応策として最近提案されている2つの方法の研究を始める契機となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来の方法では基本的に限界があったジャンプを含む最適ポートフォリオを問題に新しい2つの試みが発表されたので、その方法を取り入れる研究のために研究の延長を希望した。
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今後の研究の推進方策 |
対応策として最近提案されている2つの方法がある。 McNeil[2018]の「Qシナリオの下でのP測度のシミュレーション」と、 Wuensch[2015] の「統計的推定方式に見られる無裁定価格と観測価格の関係」である。 本研究では、これらの新しいアイデアを年金リスク管理にどのように確率測度変換に組みこむかという問題を基本的問いの1つとする。つまり、年金のヘッジ戦略における観測確率とリスク中立確率の理論的な新しい構成方法の研究である。
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次年度使用額が生じた理由 |
リスク管理のための測度変換の新しい理論的方法とシミュレーション方法によってさらなる展開を計画している。新しい方法はスイス連邦工科大学のWunsch教授との研究交流を計画している。このために予定していたVienna congress on Mathematical Financeへの出席を取りやめたことにより、次年度使用が生じたが、現在計画しているスイスでの研究交流への旅費として使用予定である。
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