研究課題/領域番号 |
16K01266
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研究機関 | 関東学院大学 |
研究代表者 |
永長 知孝 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (30324544)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 安全運転支援 / スマートフォン / 測位 / センサ情報 / カメラ映像 / GPS / 車線検出 / セルラ通信 |
研究実績の概要 |
2017年度には、スマートフォンを用いた安全運転支援システムの構築において、スマートフォンのセンサとカメラ情報による車両測位システムの検討と、セルラ通信とWi-Fi通信を併用した車両間通信システムの検討を行った。 まず、2016年度に取り組んだ四輪車の走行時に観測される振動情報を用いた測位システムと組み合わせて用いるための、センサ情報とカメラ映像を用いた測位システムの構築を行った。この測位手法は従来から検討されてきた方式であり、今回はスマートフォンのセンサ情報やカメラ映像の使用を前提として検討を行った。 本システムでは、まずGPSによる荒い測位を行い、その情報をマップマッチングにより近接する道路リンクに対応付ける。続いてカメラ映像により車線検出を行い、道路上の横方向について位置を検出する。最後に走行距離の情報から進行方向の補正を行う。本システムの性能評価を行うため、走行中のセンサ情報とカメラ映像を記録可能なスマートフォンアプリケーションを作成して、オフライン測位を行った。その結果、従来のGPSのみでは道路外を走行地点としていた場合でも道路上に位置を補正可能であることが分かった。 続いてセルラ通信を用いて車両間で位置情報の交換を行うことによる接近警報システムの改良を行った。開発したアプリケーションはスマートフォンで動作し、セルラ通信によりサーバ経由で、またWi-Fi通信により直接周辺車両に自車両の位置情報をリアルタイム送信することを目指したシステムである。これは2016年度に検討を行っていたセルラ通信のみによる警報システムではトンネル内で大幅な送信遅延や通信エラーが観測されることを踏まえて、改良を試みたシステムである。試作をしたスマートフォンアプリケーションでは、通信状況によってセルラ通信とWi-Fi通信の切り替えを行えるものの、切り替えに大きな遅延が生じることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定では、2017年度には路面より得られる振動情報を用いた車両測位システムの性能向上を目指していた。また、車両間通信についてはセルラ通信を用いた接近警報システムの改良手法の検討と、通信による効果の検証を目標としていた。 前者については、測位性能の向上を行えていない。従来問題となっていた計算量の削減を含めた測位システムの構築を目指していたが、十分な測位精度を得ることが出来なかった。このため、2018年度はこの点について検討を進める必要がある。一方、スマートフォンより得られるセンサ情報やカメラ映像を用いた測位システムの基礎的な評価を行うことが出来た。これらの情報と振動情報を組み合わせた場合の検討が必要である。 車両間通信については、セルラ通信からWi-Fi通信に切り替えて情報交換を行うシステムについて、アプリケーションの作成と実験を行うことが出来た。この部分についてはある程度の成果を得られたが、切り替えを行う際に大きな遅延が生じてしまうなど、実用性の点で不十分な性能となってしまっている。また、効果の検証シミュレーションについては進捗が得られなかった。この点での検討も必要である。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度にはスマートフォンの処理をサポートするクレードルの構築を小型コンピュータで行い、その小型コンピュータに装着したセンサやカメラの情報を用いた測位についての検討を行う。また、車両間通信についてはセルラ通信の利用できない状況でWi-Fi通信を行うシステムの改良と実験を行う。また二輪車を含む安全性の向上の観点から、新たに二輪車のライダーの安全運転支援手法について検討を行う。 スマートフォンの処理をサポートするクレードルについては、小型コンピュータを用いて構築する。具体的には、Raspberry Piに各種センサ、GPS、カメラを装着したものを用い、従来スマートフォンで処理をしていたそれらの情報をRaspberry Pi上で処理して測位を行う。スマートフォンには、主に表示や通信処理を担当させる。 車両間通信については、セルラ通信とWi-Fi通信の切り替えを行うシステムについては構築済みであるが、切り替えの遅延を解消する必要がある。この点については、スマートフォンアプリケーションの改良を試みるが、同時に前述のクレードル上に通信機能の一部を担当させることも検討する。また、構築したシステムについて、セルラ通信の通信性能の劣化するトンネルなどの状況における評価実験を行う。また、通信性能の評価には、市販の交通流シミュレータを利用した実験を検討する。 また、二輪車のライダーの安全運転支援手法についても検討を行う。通信による周囲車両の情報収集・ライダーへの提示だけでなく、後方カメラを用いることでのライダーによる直接的な状況確認手法について検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
二輪車を含めた車両間通信による安全運転支援システムの検討に際し、市販のシミュレータの導入を検討していたが、シミュレータの選択に時間がかかってしまい購入に至らなかった。このため、繰越額が多くなってしまっている。 2018年度ではこのシミュレータの購入を行い、セルラ通信とWi-Fi通信を併用した車両間通信システムの検証に利用する予定である。
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