研究課題/領域番号 |
16K01268
|
研究機関 | 南山大学 |
研究代表者 |
鈴木 敦夫 南山大学, 理工学部, 教授 (70162922)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | スケジューリング / シフト / 整数計画法 / 医療機関 / 製造業 |
研究実績の概要 |
以下の3つの事例について実用的なスケジューリングシステムの作成を試みた. 1)ある病院の麻酔科医のシフトスケジューリングの作成:病院の麻酔科医は,日勤に加えて,夜勤や休日の当直など複雑なシフトを組んでいる.麻酔科医は激務なので,なるべく公平で,業務負担の少ないシフトを作成しなくてはならない.勤務日,必要人数を考慮したシフトの自動作成システムを試作した. 2)自動車部品会社の研修の時間割作成:中部地区のある自動車部品会社で行っている研修について,講師と受講者の都合を調整して自動作成する.この企業の研修会は,非常に大きな規模で行われており,その講師の割当,受講者の選択は大きな業務負担になっていた.この時間割の作成を自動的に行うシステムを試作した.さらに,この企業では研鑽会も行っており,その場所,時間をスケジュールするシステムも試作した. 3)食品会社の従業員のシフトスケジューリングの作成:中部地区の食品工場の従業員のシフトを自動作成する.この食品工場では,24時間営業で食品を製造している.従業員は8時間勤務の3交代で勤務している.従業員は,正社員,パート,アルバイト,派遣社員の4種類に分類され,それぞれ勤務の条件が定まっている.一方,工場の各部署では,時間帯によって必要人数が決められており,この両方の条件を満たすシフトを作成しなくてはならない.このシフトは従来手作業で作成されていたが,これを自動化するシステムの試作を行った. これらのシステムは,残りの研究期間のうちに実用化に向けての課題を解決し,最終的に現場で活用されるようにする.これには,現場からのフィードバックを受けて,システムの改修,さらには再構築が必要になる場合もある.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画していた医療機関,製造業のスケジューリングシステムの作成が順調に進んでいる.2017年度までに,愛知医科大学での麻酔科医のスケジューリングシステム,研修医の当直当番介j-リングシステム,研修医の研修診療科割当システムの試作が終わり,現在,試用している.このあと,フィードバックをもらってシステムを改善する予定である.製造業のスケジューリングシステムでは,研修の講師割当と受講者割当のシステムなどの研修に関係するシステムを4種類作成し,これらも現場で試用している.同じく現場からのフィードバックによって,システムを改善する予定である.そのほかに,従業員のシフト作成自動システムも試作し,これも今年度中に現場で実際に試用してもらう予定である. このように,計画していたよりも多種多様なスケジューリング問題に対して,問題をそれぞれ定式化し,解法を考案し,システムとして実現することができた.最終年度である2018年度は,これらのシステムの完成を目指すとともに,スケジューリングシステムを作成するための一般的な手順について考察し,研究成果として残したい.当初の計画では,スケジューリングの問題は,多様な条件を含んでおり,その解決方法とシステムとしての実現は個別に工夫しなくてならないと考えていたが,研究の進捗につれて,それらの条件はある程度まとめて,普遍性のある形で表現することができると考えるようになった. もし,この成果がまとまれば,従来は開発に時間がかかっていたスケジューリングの作成システムを短時間で実現できる可能性がある.
|
今後の研究の推進方策 |
現在,各現場で試用しているシステムについて,現場からのフィードバックをもとに,改良を加え,現場で実際に使えるようする.現在試用しているシステムは病院関係3種類,製造業で5種類と多数にわたっており,個々のシステムについて,改良するのに,2018年度の大半の期間を費やす予定である. これとは,別に,スケジューリング作成システムにおける条件を自動的に作成することができないかを考察する.これは,従来,個々の問題について,個別に工夫を凝らしていたスケジューリング問題を,より普遍的な方法論で記述しようとする試みである.本研究課題で数多くのスケジューリングシステムを実現していく中で,スケジューリング問題で出現する多種多様な条件もある程度は分類することができ,定式化する際には,その類型を用いることで簡素化できる可能性があることがわかった.将来的には,問題の定式化を自動的に行えるようなメタなシステムの作成を目指したい. このことによって,今まで多くの時間と手間をかけて,手作業で行われてきたスケジューリングを,ごく簡単な操作で自動化できるようなシステムを作成することができると考えられる. これは2018年度中には完成できないかもしれないが,その端緒となるようなシステムを試作することに取り組みたい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では,3月に香港理工大学のDepartment of Logistics and Maritime studiesのZhou Xu准教授との輸送分野でのスケジューリング問題について,研究打ち合わせに出張する予定であったが,双方の都合がつかず,出張することができなかった.今年度は,早めに予定を調整して,香港理工大学への出張をするために,この予算を使用する予定である.
|