研究課題/領域番号 |
16K01277
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研究機関 | 鹿島建設株式会社(技術研究所) |
研究代表者 |
鳥澤 一晃 鹿島建設株式会社(技術研究所), 都市防災・風環境グループ, 主任研究員 (80416734)
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研究分担者 |
矢代 晴実 防衛大学校(総合教育学群、人文社会科学群、応用科学群、電気情報学群及びシステム工, システム工学群, 教授 (90191105)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | リスク評価 / 自然災害 / 交通インフラ / ロジスティクス / 地理情報システム |
研究実績の概要 |
平成28年度は、地震・津波による交通インフラの機能支障・復旧予測モデルの検証を実施した。 まず、道路の機能支障・復旧予測モデルについては、本研究を開始した4月に熊本地震が発生し、多数の道路機能支障が生じたため、当該地震における道路通行止め発生率データ(単位道路延長当たりの全面通行止め発生件数)を作成し、計測震度との関係を分析した結果、研究代表者がこれまでに構築した予測モデルと概ね対応していることが分かった。また、熊本地震の計測震度分布に対して予測モデルを適用した結果、通行止め分布や件数を概ね再現できることを確認した。 また、港湾・空港の機能支障・復旧予測モデルについては、被害が甚大であった東北地方太平洋沖地震を中心に既往の調査・研究結果を収集し、本研究で志向する簡易予測モデルに係る課題を整理するとともに、港湾に関しては計測震度と津波浸水深の両者を入力変数とする被災ランク(供用再開可能時期で区分した3段階の被災程度)の発生率予測モデルを構築した。なお、空港に関しては既往の研究結果から再構築の必要性は低いと判断した。 さらに、想定地震を対象とした交通インフラの機能支障・復旧予測に基づく物資輸送支障リスク評価については、首都圏郊外の輸送拠点から都心の物資集積拠点までの仮想の物資輸送を例題として、両拠点を結ぶ複数ルートの地震リスク解析を行なった。震源は対象地域に影響を与えるすべての震源(活断層、海溝型地震、背景地震)とした。道路は盛土、高架橋、橋梁、トンネルに分類して、施設別にフラジリティ関数を設定の上、それぞれ損傷個所数および復旧期間に関する損失関数を作成した。各ルートを複数施設で構成されるポートフォリオとして確率論的にリスク評価を行なうことで、ルートの物資輸送支障リスクをリスクカーブで比較が可能となり、大規模震災に備えた合理的な物資輸送戦略へ貢献できることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究を開始した4月に熊本地震が発生し、当初の計画になかった被害データ収集や被災地踏査を行なったが、過去事例に基づく検証を熊本地震データに基づく検証に変更し、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
当初の計画どおりに推進する。次年度は風水害・火山噴火による交通インフラの機能支障・復旧予測モデルの構築、最終年度は地震・津波・風水害・火山噴火による物流網の輸送支障リスク評価手法の提案を行なう。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初の計画では、人件費・謝金として過去事例のGISデータ化のための外注費を計上していたが、熊本地震における道路通行規制情報は防災科学技術研究所によりデジタイズされたデータが公開されたため、当該外注作業が大幅に軽減された。一方で、物品費として計上していた分析対象地域のGISデータ購入費は、新たに通行規制解除期間と交通量の関係を分析する目的で、道路交通センサスデータを購入したため、計画よりやや増えた。両者の差額が次年度使用額として生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
当初の計画どおりに使用する。平成28年度の残額については、研究成果の学会発表をより積極的に行ない、旅費や投稿料として使用する。
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