複数の液滴を連続的に滴下して消火できる範囲を拡大することが目標.以下の三つに着目.1)液滴複数系統を同時に滴下して消火範囲が最も広くなる位置の最適化,2)液滴の連続滴下によるミスト群の連続発生限界の測定,3)液滴衝突の瞬間挙動を詳細に観察し,衝突後の挙動と消火確率との関係を調査. 本研究は,加熱固体表面に消火剤液滴を衝突させて蒸気化・二次微粒化し,これを利用して上方の火炎を消火させる「間接消火」を対象としている.平成30年度は,特に複数液滴の落下による消火範囲の拡大効果に着目した.純水にセラミック系接着剤を一定割合混合し,これを加熱されたステンレス金属表面に塗布して表面改質を施した.ここに消火剤液滴を滴下してその上方に配置した火炎を消火させた.このとき液滴を一滴落下させる場合は,火源中心から徐々にx方向(横方向)へ落下位置をずらし,消火確率の変化を測定した.また液滴を二滴落下させる場合は,火源を挟んで左右対称に滴下位置を配置し,徐々に火源からのx方向距離(横方向)を両方とも離しながら,消火確率の変化を測定した.一滴と二滴の効果を比較した結果,蒸気群の干渉で消火に有効な液滴間距離は20mm程度となった.なお表面改質した200度以上の加熱固体表面へ落下する一滴の液滴蒸発挙動から,少なくとも5秒間隔で液滴を落下させることで連続的に火源を窒息できることがわかった.ただし,火源への連続滴下で表面温度は最大50度程度まで低下するため,間接消火の効果が限定される可能性がある.木材火災のように芯材内部まで高温を保っている場合もあるため,連続落下の有効間隔は今後も別途検討すべき項目である.接写による液滴衝突挙動の観察から,表面改質を施した場合,衝突後に固体表面に沿って液膜が拡大する途中でその進路を妨げられ,蒸気発生範囲を縮小している様子がわかった.これにより一滴の消火範囲が縮小したといえる.
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