研究課題/領域番号 |
16K01280
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
鈴木 愛 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 准教授 (40463781)
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研究分担者 |
Bonnaud Patrick 東北大学, 未来科学技術共同研究センター, 助教 (00757693) [辞退]
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 液体ナトリウム / ナノ粒子 / 電位 / 電場 / 量子化学 / 高速化量子計算 / 量子分子動力学法 / 遷移金属 |
研究実績の概要 |
液体ナトリウムは主に核燃料の冷却材に用いられているが,酸素や水に対する反応性が高く安全性の向上が急務である. 金属ナノ微粒子を含む液体ナトリウムは爆発の低下が実験的に確認されているがそのメカニズムは未解明であり新冷却素材の評価実験自体を安全に遂行する事が課題となっている. 爆発低減に効果がある元素を原子レベルのミクロな領域で起こる爆発反応エンタルピーを定量的に比較する事で特定する. ナノ粒子の分散・凝集が測定可能なメソ領域では実時間軸を考慮に入れナノ流体の耐久性を予測する. ミクロ・メソ領域で得た反応性や微粒子の分散度を入力情報として反映させたマクロ領域の流体特性評価を行い、実験検証を交えながら新規冷却材の安全な設計指針を得る事を目的とする. 固-液界面間の電気勾配はナノ粒子を構成する元素に依存する.ナノ粒子の分散性に影響する粒子間反発を元素種ごとに予測する. ミクロ領域で評価したナノ粒子を含むナノ流体の粘度・表面張力など分散性評価に重要な物性を元素種ごとに実験と検証しながら理論予測を行う. 量子分子動力学計算から液体ナトリウム中のナノ粒子のt 時間における移動距離を最小二乗変異から拡散係数が求まりStokes-Einsteinの関係式μ=kT/6Drπ(μ:粘度,D:拡散係数,r:ナノ粒子径,T:温度)からナノ流体の粘度が算定できる. 同時にナノ粒子の凝集性を左右する元素種‐ナトリウム間の電気化学勾配も量子化学的に定量評価できる. 次に、静的モンテカルロ法とは異なり、実時間を扱える3次元キネティックモンテカルロ法(3D-KMC)に、粒子間に働くクーロン反発項、拡散係数、表面張力をミクロおよびメソ領域の諸物性として反映できるよう開発し数万時間後の分散性を実験結果と比較・検証する. 液体ナトリウム中で元素種ごとに異なる電気二重層を構築するナノ粒子の分散性を粒子モデルに反映し、メソ領域で経時耐久評価を行う.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
液体ナトリウムは自由電子が豊富に存在するが、遷移金属ナノ粒子が浮遊するナノ流体ではナトリウムは遷移金属に電子を奪われ自由電子が欠乏している. このようにナノ流体中のナトリウムはナノ粒子の存在し無いナトリウム液体とは異なる電子状態であるため水蒸気と起こす反応:Na + H2O→ Na+ + 1/2H2も、純粋な液体ナトリウムと反応して起こるほどの激しい爆発には至らない事が実験で判明している. このナトリウム-水爆発反応の、遷移金属ナノ粒子を含む場合とそうでない純粋なナトリウム液体の場合で起こる反応過程の電子授受の違いを、液体密度を再現でき固-液界面を含む原子を扱えるほど大規模な量子計算が可能な高速化量子分子動力学法を適用して初めて量子化学的な定量評価を行う事ができた。2017年秋に開催された大規模な流体の国際学会で成果報告を行う事ができた。
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今後の研究の推進方策 |
メソ領域においてナノ流体の分散性を経時評価したが、流動性を確認する為、実際の核燃料冷却プラント内部の配管における流れ解析を行う. ミクロ・メソ領域で導出した拡散係数、表面張力、粘度、ナノ粒子の電気化学的反発力、分散度、最適粒径、濃度をナノ流体のマクロ特性に導入し、実稼働流体速度、温度を考慮してナノ粒子を構成する元素種ごとに異なるナノ流体の流動性を評価する. さらに、液体ナトリウム流をマーカーとした時の粒子浮遊流中のナノ粒子への衝突頻度をカウントする事で、凝集、堆積・凝固、相分離、つまりに起因する極端な乱流の有無などの危険因子を検証する.
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次年度使用額が生じた理由 |
2017年秋の国内旅費として電気化学会に出席し成果発表しようとしていたが、流体解析に関する大規模な国際シンポジウムが仙台市内で開催され、そのシンポジウムに出席し広く海外の専門家からも意見を頂くため、急きょ全ての発表資料を英語にし、英語による発表を行ったため、海外の専門家から意見を頂く事ができ、有意義に活用できた。
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