研究課題
液体金属ナトリウムは、伝熱特性に優れ、核燃料の冷却材としての利点を有する一方で、化学的に活性である為、水蒸気との接触により、急激な化学反応を生じるデメリットがある. アルカリ金属が水や大気中の水蒸気と接触して起こる爆発の代表例として、液体ナトリウム-水蒸気反応がある. 本反応の激しさは、ナトリウム陽イオン同士のクーロン爆発に起因すると報告する研究もあり、実験検証の危険さ故に、まだ不明な点も残されている. そこで、773Kの水蒸気分子が、液体ナトリウムに侵入する、ナノスケールの液体ナトリウム-水蒸気間の、気液反応モデルを高速量子分子動力学化学計算により検証したところ、水蒸気分子の水素原子が、水素化ナトリウムNa-H結合が生成し、その後、水素ガス分子が生成し、液体ナトリウム表面から勢いよく飛散する、水蒸気-液体ナトリウム反応を捉えた. なお、水素化ナトリウムNa-Hの負電荷を帯びている水素と、新しく液体ナトリウム表面に衝突してくる水蒸気分子の正電荷を帯びている水素が液体ナトリウム上で、電子的に中性な水素ガス分子として飛散した. 一方、チタンナノ粒子を含む液体ナトリウム表面を同様に検証したところ、チタンナノ粒子を含む液体ナトリウム表面では生成した水素分子がナトリウム中に滞在する様子が確認できた. チタン金属が周囲のナトリウムとの間に、水素を内部に閉じ込める電子構造を構築することにより、液体ナトリウム-水蒸気反応における発生水素の形態を変えていると考えられ、これが液体ナトリウムの水蒸気反応における爆発抑止に効力を発揮していると考えられる. このチタンを含む時の電子分布は、電気陰性度(H2.2>Ti1.54>Na0.93)に合致した序列である事を確認できたため、水素とナトリウムとの電気陰性度の相対序列を保持できる金属が爆発抑止力がある金属として有望であると考えられる.
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