研究課題/領域番号 |
16K01281
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
武田 茂樹 茨城大学, 工学部, 教授 (50323209)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 災害情報伝達 / 安否確認 / 電源喪失 / 通信インフラ喪失 / RFID / UHF / NFC |
研究実績の概要 |
大規模災害時には,電源インフラや通信インフラを喪失した状況においても,住民の安否確認を効率的に行える手段が求められる.東日本大震災以降は,例えば,小学校区を基準とする規模の地域コミュニティー単位において,非常用電源や無線LANの整備が進められている.しかし,非常時にこのような無線LANを用いて災害情報伝達や安否確認を行う場合,コミュニティーに所属する住民が単一のアクセスポイントに殺到することにより十分な情報伝達品質が得られず,安否確認がスムーズに実施できないことが想定できる.このように,無線LANにのみ依存し,これが良好に動作することを前提とした災害時安否確認システムでは,非常事態に対応できない可能性も考えられる.従って,災害時の安否確認には,多様な選択肢を用意しておくことが有効である. 一手段としては,各コミュニティーにおいて,紙ベースで安否確認を住民に記載してもらい,これをスキャンして,いち早く通信インフラが回復した市役所などを経由してインターネット公開する手段が考えられる.しかし,紙ベースの場合,資料が膨大な量となり,さらに,手書きによる記載は検索が難しく,安否確認を行う側での確認が困難になると予想される.また,旅行先や出張先で被災した場合など,検索エリアを限定することが困難な場合も想定できる.さらには,障害者とって,スマートフォンを利用したテキストデータの閲覧や自動読み上げによる聞き取りは,重要な情報源となる.このように,災害時の安否確認や情報伝達においては,検索等の処理が容易で確実なテキストデータによる処理が望ましい. 本年度は,主に,広く携帯端末として普及しているNFCとUHF帯RFIDを併用して,安否確認や災害情報の伝達を行うシステムを開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに,災害情報伝達と安否確認を行うシステムとして,RFID(Radio Frequency Identification)システムを利用して,電源や通信インフラが途絶した状況においても,テキストデータ形式で効率的に行政から住民への情報伝達や安否確認が行えるシステムを提案してきた.このシステムは,RFIDタグが,リーダ/ライタ(Reader/Writer:R/W)から放射される電磁波からエネルギーを得て動作可能であるという特徴を利用したもので,電源インフラを喪失した場合でも,情報伝達が可能である.そして,このシステムでは,道路から近い位置に設置された安否確認情報収集システム内に保存されている情報を効率的に収集するために,読み取り距離の長いUHF(Ultra High Frequency)帯RFIDを用いた. 一方,このようにUHF帯RFIDを利用した場合,一般的に広く普及し,携帯端末に搭載されている13.56MHz帯RFID R/Wでは情報を災害時安否確認情報収集システムに書き込めないという問題点があった.しかし,これは,有線接続可能なI2C(Inter-Integrated Circuit)バスを有するUHF帯RFIDタグと13.56MHz帯RFIDタグを用いたユーザーメモリの共用化により解消できる. 本研究では,UHF帯RFIDタグと13.56MHz帯RFIDタグのユーザーメモリの共用化について,試作機を作成して実現可能性を検証した.さらに,携帯端末に実装できる安否確認用Androidアプリケーションを作成し,不特定多数のユーザーの安否確認データの書き込みが可能であることを実証した.また,電源が切れても文字を保持可能な電子ペーパーも導入し,安否確認表示に使用した.
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今後の研究の推進方策 |
次年度は,携帯端末用安否確認アプリケーションの改良により,より使い勝手のよいものに仕上げていく. さらに,RFIDタグの並列化により,データ保存メモリ空間の拡張を行うために,I2C拡張半導体の導入を試みる. さらに,UHF用のパッチアンテナを作成し,通信距離の拡大を試みる. 最後にこれらの技術を統合し,災害電子掲示板を完成させていく.
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末の出張計画において余剰が発生した.また,次年度,RFIDタグ並列化実験のための,RFIDタグ購入費用として充てるために発生した.
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