研究課題/領域番号 |
16K01285
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研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
佐藤 亮一 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (00293184)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 被災地観測 / 自然災害 / レーダポーラリメトリ / 合成開口レーダ / リモートセンシング |
研究実績の概要 |
PolSARデータを用いた地震や土砂崩壊等で変形/部分倒壊した住宅群,および洪水で浸水した住宅群の検出・識別を実現するために,以下の研究を行った. <1. 地震前後に取得された被災領域のPolSARデータの画像解析> 研究開始直後に熊本地震が発生したため,変形/部分倒壊した住宅モデルの偏波散乱コンピュータ解析を行う前に,被災地の熊本県益城町周辺の地震発生前後に取得されたPolSARデータの画像解析を行った.偏波オリエンテーション角補正と固有値/固有ベクトル解析を組み合わせた被災状況検出アルゴリズムを適用し,震災前後の結果を比較したところ,被災箇所の検出が可能であることがわかった. <2. 洪水前後に取得された被災領域のPolSARデータの画像解析> 2015年に発生した鬼怒川水害の被災地である常総市の鬼怒川流域を対象に,PolSARデータの画像解析を行った.当初は浸水直後の被災住宅周辺のみを観測対象と考えていたが,洪水が治まった後の「復興」を考え,水害によりどの範囲まで被害にあったのかを把握することも重要と考え,被災後1週間のデータを中心に詳細に解析を行った.その解析結果から,鬼怒川流域の被災住宅領域,特に浸水した住宅とその周辺の道路からの偏波散乱特性の変化が,被災状況把握の新たな指標に利用できることがわかった. <3. 橋梁の健全性に関する偏波散乱測定> PolSARによる「橋梁も含めた避難救助用陸路の健全性の確認」を実現するために,橋梁モデルによる偏波散乱測定(PolSAR測定)を実行し,橋梁が健全な場合,部分的に倒壊した場合の偏波散乱特性を調べた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地震や土砂崩壊等で変形/部分倒壊した住宅群,洪水で浸水した住宅群の検出・識別を実現するためのレーダポーラリメトリ画像解析アルゴリズムを,簡易住宅群モデルに対する偏波散乱コンピュータ解析と電波暗室でのモデル実験の結果を基に構築する予定だったが,2016年4月の熊本地震直後のPolSARデータが取得されたので今年度はこの熊本周辺のPolSARデータの画像解析を先に行い,その偏波散乱特性を調べることで被災住宅群識別アルゴリズムを構築した.被災前後の画像より,構築したアルゴリズムにより被災領域の状況把握ができることが確認できた.また,洪水被災地の識別についても,2015年の鬼怒川流域のPolSARデータの画像解析結果から,水害被災住宅群識別アルゴリズム構築の検討を行った.さらに,次年度行う予定だった橋梁の状態把握のための偏波散乱測定も行うことができた. 以上のように,研究を進める順序の変更はあったが,当初予定していた目標は概ね達成できたと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
<1. 地震被災住宅領域の識別アルゴリズムの精度改善> 熊本地震意外の被災地の識別,およびより詳細な被災状況(被災レベル)を把握できるよう本手法の精度向上を目指し,変形/部分倒壊した住宅モデルに対する偏波散乱解析を行う予定である. <2. 水害被災住宅領域の識別アルゴリズムの精度改善> 今年度の解析で求めた新たな偏波指標が他の水害領域にも利用できるかを検証するために,他の被災領域のPolSAR画像解析を行うとともに,電波暗室で洪水時住宅モデルの偏波散乱測定を行って,物理メカニズムとの対応を詳しく調べる予定である. <3. 橋梁の健全性を示す偏波指標の決定> 健全橋梁モデル,部分倒壊橋梁モデルに対する偏波散乱解析(コンピュータ解析)も行う予定だったが,所有する大容量メモリ搭載のワークステーションが故障したため,今年度は十分には実行できなかった.次年度は,今年度購入したPCを解析用にセットアップし,(若干小さめの)橋梁モデルに対する偏波散乱解析をはじめる予定である.
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次年度使用額が生じた理由 |
橋梁の健全性に関する偏波散乱測定において,当初購入予定だった制御用コントローラは他装置で代替することで測定が可能となったため,コントローラ購入費を他の物品(解析用PCの追加,故障したメモリやHDDの追加等)の購入等に利用した.この差額により次年度使用額が生じてしまった.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に解析用に使用する予定の衛星/航空機PolSARデータが非常に大容量となるため,データ保存用に大容量HDDを購入する予定である.
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