研究課題/領域番号 |
16K01289
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
中尾 理恵子 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(保健学科), 准教授 (80315267)
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研究分担者 |
全 炳徳 長崎大学, 教育学部, 教授 (10264201)
杉山 和一 長崎大学, 水産・環境科学総合研究科(環境), 教授 (80253631)
川崎 涼子 大分県立看護科学大学, 看護学部, 准教授 (30437826)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 地理的不利状況 / 斜面地域 / 防災 / ソーシャルキャピタル |
研究実績の概要 |
長崎市内の斜面市街地3地区(水の浦地区、浪の平地区、江平地区)および離島地区(伊王島地区、高島地区)のフィールド調査、および自治会長等へのキーインフォーマントインタビュー調査を実施した。フィールド調査においては、地区内の地形、交通、居住、病院や介護施設等インフラの状況と防災設備について調査した。調査前に人口や世帯、人口構成などの事前情報の収集を行った。 斜面市街地区のフィールド調査の結果で分かったことは、歴史のある古い地区であっても、人口流出が進行しており、空き地・空き家が増加していたという点である。また、道路状況は坂道と階段であり、自動車の利用がしにくい状況であり、斜面の高度が高いほど道路状況が悪い環境であった。特に商店等の閉鎖が多くなされており日常生活の買物への不便さがあると考えられた。防災設備については、消火栓の設置状況を確認できたが、地区自治会の活動として消火器を地区内の主な場所に複数個設置するといった状況が確認できた。公民館への防災備品の備蓄やAEDの確保をしている地区があった。キーインフォーマントインタビューからわかったことは、人口減少と高齢化が影響して地域行事自体が成り立たなくなっており、地域内の互助的な関わりも希薄になっていることであった。防災訓練や防災活動、防災組織についても参加者の確保ができないと現状である。 離島地区においては、人口減少が顕著であり、使用されない空き家・アパートの増加が目立つ。伊王島地区は本土部と結ぶ橋が2011年に建設されて介護保険サービスの利用が確保された。高島地区は高齢者割合が非常に高い(52.8%)が、診療所1か所、介護サービス利用も難しい現状であった。しかしながら、住民の買物先である市場内に高齢者サロンを設けており、日常生活と介護が包括的に実施されていた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
地理的不利状況として、調査対象地区となる斜面市街地区と離島地区から5地区を選定し、フィールド調査とキーインフォーマントインタビュー調査を実施した。研究計画作成時では、斜面市街地区のみを地理的不利状況を抱える地区としていたが、長崎市内であるが離島である地区を対象地区として新たに加えることができた。各地区の自治会長等とコンタクトをとりインタビュー調査をすることで関係性の構築ができた。今年度の計画である住民調査実施への準備ができたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究実施計画である対象地区の住民調査を実施する。質問紙調査の調査項目には、フィールド調査やキーインフォーマントインタビューで得られた情報から考えられた調査項目を加味する計画とする。特に、日常生活としての買物や消耗品等の購入での困難の有無、近隣との互助的な関係性の頻度と内容、防災に対する不安と備えに関する項目を追加する必要がある。 自治会を通じた住民調査とするため、自治会の定例会などで調査の目的と意義について説明し理解を得て実施する必要がある。この手順により住民調査の回収率を向上させることができると考える。
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次年度使用額が生じた理由 |
GISの利用として、ライセンス登録が必要なArcGISの購入を検討していたが、Quantum GIS(QGIS)を使用することでコストの削減を図ることができた。また、住民質問紙調査の郵送費を本年度使用として計上していたが、地域への介入の進度から住民調査が次年度の実施となった。
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次年度使用額の使用計画 |
調査対象地区として離島地区への調査が増えたため、次年度実施する住民質問紙調査の回収費用に充填する計画である。また、地理的不利条件下での防災対策の先進地域として、福島県川内村(山間部過疎地区)、尾道地区(斜面地区)へのフィールド視察を計画している。
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