研究課題/領域番号 |
16K01292
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研究機関 | 愛知工科大学 |
研究代表者 |
板宮 朋基 愛知工科大学, 工学部, 准教授(移行) (60583896)
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研究分担者 |
小笠原 敏記 岩手大学, 理工学部, 准教授 (60374865)
村上 智一 国立研究開発法人防災科学技術研究所, その他部局等, 主任研究員 (80420371)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 車避難 / バーチャルリアリティ / 疑似体験 / 氾濫流 / ヘッドマウントディスプレイ / 津波 / 高潮 |
研究実績の概要 |
本研究では,実験および数値計算による物理量を考慮した実測データを組み込み,津波や高潮,大雨による洪水など氾濫流下におけるヘッドマウントディスプレイ(HMD)型高精度車避難疑似体験システムを開発する.HMDを用いることにより,省スペース・低コストで効果的な没入疑似体験を可能にする.本研究は,愛知工科大学(板宮)と岩手大学(小笠原),防災科学技術研究所(村上)が連携して行っている. HMD型車避難疑似体験システムで用いる車の挙動特性は,3Dプリンターで造られる相似則を満たした模型による実験を行い,そこから得られた実測データを反映させた.実験は小笠原が担当した.実験に用いた開水路は,長さ10m,幅1m,高さ0.8mの計測区間を有し,循環流および段波を発生させることが可能である.容量式波高計およびプロペラ流速計などの計測機器を用いて,定常流および非定常流の2種類の氾濫流下における浸水深および流速を計測し,時刻歴データベースの構築を行った. また,村上は,IPCCの温暖化シナリオの基,今世紀末までの海洋環境場において熱力学的平衡に達する最強台風が東京・伊勢・大阪の3大湾に来襲したとき,台風渦位ボーガスおよび大気-海洋-波浪-氾濫流結合モデルで高潮氾濫流を予測し,浸水深や流速等の面的情報をデータベース化した. これらのデータを用いて,板宮は,HMD型車避難疑似体験システムを試作した.自治体主催の総合防災訓練などの防災イベントや展示会に持ち出し,自治体の防災担当者のほか一般市民も体験し,好評を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では,平成28年度は,実験による氾濫流の浸水深・流速のデータ収集(小笠原)と結合モデル数値計算による高潮氾濫流の浸水深・流速のデータベース化(村上)が主であった.しかし,小笠原と村上の成果に加えて,実測値を反映したヘッドマウントディスプレイ(HMD)型簡易疑似体験システムの開発(板宮)を先行して開始することができた. 防災イベントで展示を行ったところ,自治体の防災担当者のほか一般市民から好評を得た.新聞やテレビにおいても複数回紹介された. 東日本大震災から6年が経過し,車避難の問題点と対策の重要性が議論されるようになって来たため,本研究は社会的ニーズにマッチしていることを実感した.
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今後の研究の推進方策 |
平成29年度は,28年度の成果を踏まえて,計画通り,氾濫流下における車挙動特性の把握(小笠原),車に作用する衝撃・持続波圧による流体力のモデル化(小笠原),実測値を反映したHMD型簡易疑似体験システムの開発(板宮),全天周映像に振動体感機能を加味した高精度システムに改良(板宮)を行っていく. また,自治体や防災関連機関と連携し,本システムを積極的に一般公開し,市民の防災意識向上に貢献していく.体験者の感想やアドバイスを踏まえ,改良を進めていく.
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