研究課題/領域番号 |
16K01295
|
研究機関 | 阪南大学 |
研究代表者 |
三好 哲也 阪南大学, 経営情報学部, 教授 (10254434)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 避難シミュレーション / 避難実験 / マルチエージェントシステム |
研究実績の概要 |
災害時の減災,縮災を実現するためには,有効な避難計画の立案が求められている.その検討に当たっては,種々の災害に対する状況を想定する必要があり,災害状況を再現できる避難シミュレーションは有効であると認識されている.多くの人的要素(避難者や誘導者)を含む避難状況の精緻な再現には,避難者をエージェントとして表現するマルチエージェントシステム(MAS)を用いて,避難シミュレーションを行う場合が多い.本研究課題では,マルチエージェントシステムで精緻な避難シミュレーションを実現するために,シミュレーションに使用される避難モデルの構築に必要な各種パラメータの設定指針の策定を研究目的としている.そのために,MAS を用いた避難シミュレーションにおいて,事前に実施された避難訓練や実験などから観測できる群集の流動に基づき,避難モデルに含まれるパラメータを適切に設定する方法を開発し,モデルパラメータ設定に対する指針策定を進める研究計画となっている. 以上の課題を進めるため,(1)避難環境や対象者を想定した避難訓練の実施及び測定,(2)測定した避難状況からの避難モデルパラメータの算出手順の確立,(3)指定の避難モデルパラメータによる避難シミュレーション実施手順の確立,(4)実際の避難状況と避難シミュレーターの状況の比較研究について検討実施した. そして,これまでに実施条件を変えた2回の避難実験を行い,同種の避難条件での避難シミュレーションにおける避難状況の比較を行い上記手法の有用性を確認した.これらの成果をまとめ関連学会で研究成果の発表を行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題を進めるにあたり,(1)ソーシャルフォースモデルによる避難シミュレーション環境の構築,(2)避難環境や対象者を想定した避難訓練の実施及び測定,(3)測定した避難状況からの避難モデルパラメータの算出システムの開発,(4)指定の避難モデルパラメータによる避難シミュレーションの実施,(5)実際の避難状況と避難シミュレーターの状況の比較について,順次実施する計画を策定しその計画に沿って研究課題に取り組んだ. 平成28年度は,約30名の被験者が避難者として参加する小規模な避難実験を実施した.その際の避難状況を360度撮影可能なカメラで撮影し,避難者の位置の特定システムを実装した.そしてその避難者の流動データからモデルパラメータの決定が可能な分析環境を構築するとともに,その避難シミュレーションの精度評価ができる研究環境の構築を進めた. 平成29年度には,前年度に実施した避難実験時に記録した複数の映像から流動データを算出し,変換誤差を低減するシステムの開発を行った.そしてそのデータと避難シミュレーションの結果との比較から,エージェントの動作を規定するパラメータの評価を行った.その成果を関連学会で発表を行った.次に,実際の状況を想定して,避難者を51人とする教室から避難実験を実施し,机や出入り口といった避難障害物のある環境での避難者の群流を映像で記録し避難者個々の避難者流動のデータ生成を行った.計測データからのシミュレーションモデルの評価は次年度の課題となっている.
|
今後の研究の推進方策 |
これまでに本研究課題では,避難実験の実施環境およびその際の避難状況の計測方法を確立した.また,避難状況映像から避難者流動を精度よく算出するシステムの開発を行った.そして,実際の状況を想定した教室からの避難実験を行い,その際の避難者流動をそのシステムで計測した.今後は,これまでに実施した避難実験からの避難者流動データと避難シミュレーションとの比較によって,避難モデルパラメータの特性を考察する.また,研究成果を公表する準備を進める.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度に報告した通り,避難実験の際に行う避難者の計測に必要な設備(カメラ)の購入費用が廉価で行えたことと,カメラ設置のための治具を廉価なもので代替したこと,および避難実験データ整理作業を自前で行いデータ整理にかかる人件費を抑制したことにより,経費支出が低減されている. 研究計画において,次年度も引き続き避難実験を実施する予定になっているが,被験者の増員の費用およびデータ整理要員に割り当てる予定である.また,当初予定している通り研究成果を国内外で発表を行う予定である.
|