研究課題/領域番号 |
16K01302
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研究機関 | 富山高等専門学校 |
研究代表者 |
由井 四海 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (10413759)
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研究分担者 |
保前 友高 富山高等専門学校, 商船学科, 教授 (30470032)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 火災・爆発防止 / 爆発物検知 / 中赤外光源 |
研究実績の概要 |
空港などでの保安調査において、爆発物によるテロを未然に防止するための非接触型爆薬蒸気ガスセンサの研究を主目的とする。本年度は光源部の構築とその特性評価、対象ガスであるジニトロベンゼン(DNB)蒸気(TNT模擬化合物)の吸収線波長との比較を行った。光源部は、波長1589nm(シグナル光)と1064nm(ポンプ光)のDFBレーザー、偏波保持カプラ、周期分極型ニオブ酸リチウム(PPLN)結晶による波長変換モジュールで構成され、差周波発生により3.2um帯の中赤外光が生成される。各DFBレーザーに100mAの電流を印加し(1589nm:15mW, 1064nm:28mW)、バンドバスフィルタにより中赤外光のみを測定した結果、PPLNの温度が50.6℃のとき強度が最大となり、117uWの中赤外光の出力が確認された。また、DNBの各異性体(o-,m-,p-)の吸収が最大となる波長に対してシグナル光とポンプ光の波長の組み合わせが存在するか各レーザーの特性と比較した結果、全ての異性体において吸収が最大となる波長にシグナル光波長とポンプ光波長を制御することが可能であることがわかった。さらに、対象ガスの吸収が弱く測定に必要なSN比が確保できない場合が予想されるため、長い吸収長での実験を実施できるように光路長25mの多重反射セルを設計構築した。これらの実験で得られた諸条件は次年度以降に予定されている研究の基礎データとして利用される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
非接触型爆薬蒸気検知ガスセンサの研究を目的とし、本年度は要素技術の検討とシステムの構築を行った。目的:測定対象となるガスの吸収線の中心波長について検討し、対応する吸収強度から適した光路長のシステムを構築した。内容:本研究では3.2um付近に位置するDNB蒸気の吸収線を測定対象とするが、さらに長波長の吸収線より1桁ほど強度が低い。そのため、光源側の出力強度と検出側の検出感度と応答速度を総合的に評価し、個々の光学部品の最適な組み合わせを選択した。そして、十分な信号強度の得られる光路長の光学系を設計し、測定システムを構築した。方法:DNBの各異性体の吸収度が最大となる時の波長にDFBレーザーの温度と印加する電流の制御を行った。また、波長変換モジュールでの差周波発生の変換効率を測定し、最も変換効率が大きくなる温度の設定を行った。その結果、波長変換モジュールからは3.2um帯の光が出力されていることを確認することができた。このように、研究年度計画の内容が実施され、おおむね順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
計画案の通り、次年度では本年度に構築されたシステムをもとに、波長変調法と波長変換素子の最適条件を明確化する。目的:測定の高感度化のために強度または波長変調法を適用し、その際の光源側の波長変換素子での非線形性が多重化する挙動を明らかにする。内容:波長変調法においてレーザーの発振波長を高速に変化させる場合に、波長変換素子の非線形により生じる残余強度変調が、検出感度に与える影響を定量化するとともに最適な変調パラメータを導出する。さらに、検出側の応答速度と帯域幅も考慮したうえで、変調方法の改良および変調ノイズの低減を図る。さらに研究状況に応じて最終年度で予定されている高速測定と長期安定性の実現方法についても検討する。また、現時点での研究計画の変更はない。
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次年度使用額が生じた理由 |
為替相場の変動等で赤外線検出器の価格が変わったため。
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品(試薬)の購入に割り当て、追加で気圧・温度などの測定条件を変えた実験を行う。
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