研究実績の概要 |
空港などでの保安調査において、爆発物によるテロを未然に防止するための非接触型爆薬蒸気ガスセンサの研究を行った。最初に、光源部の構築とその波長特性、対象ガスであるジニトロベンゼン(DNB)蒸気(TNT模擬化合物)の吸収線波長との比較を行った。差周波発生による赤外線レーザーを組み、3.2μm帯において最大117μWの出力が得られた。波長可変範囲とDNBの吸収線波長を比較し、光源の電流と温度を制御することで3つの異性体それぞれの最大吸収波長に光源波長を調整できることを確認した。また、吸収信号の強くするために光路長25mの多重反射セルを製作し、これはガス吸収を利用した他のセンシングシステムにも応用できる。次に、センサシステムの動作と波長変調時の挙動を確認するために、DNBと同じ吸収波長帯域に吸収線を有する大気中の水蒸気の測定を行った。光路長6mの条件において、測定された透過率と波長についてそれぞれ誤差1%以内であることが確認された。変調特性については変調周波数が最大で1kHz、水蒸気を測定する場合で信号が最大となる変調振幅が6.5GHzとなった。最後に、吸収スペクトル全体を取得するための広い波長範囲の掃引方法の実現とDNBの吸収測定を行った。光源制御に関する電流と温度の4つのパラメータを同時に変化させることで、3.22~3.25μmの範囲を強度3μWで一定のまま波長掃引することができ、2つの異性体の吸収線を同時に測定することが可能となった。また、1,3-DNBについて、180℃で気化させたガスの吸収信号を測定したところ透過率が65%になるとともに、ヒーター温度(気化量)に対する吸収信号の変化が観測され蒸気ガスの測定を行うことができた。
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