研究課題/領域番号 |
16K01307
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研究機関 | 国立研究開発法人情報通信研究機構 |
研究代表者 |
片桐 祥雅 国立研究開発法人情報通信研究機構, 未来ICT研究所グリーンICTデバイス先端開発センター, 研究マネージャー (60462876)
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研究分担者 |
川原 靖弘 放送大学, 教養学部, 准教授 (10422403)
瀬藤 乃理子 甲南女子大学, 看護リハビリテーション学部, 准教授 (70273795)
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研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
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キーワード | 事象関連深部脳活動 / 持続的注意機能 / ネットワークダイナミクス / 脱賦活 / フレミンガムリスクスコア / 連続血糖値モニタリング / 血糖値スパイク / 糖新生 |
研究実績の概要 |
脳波後頭部α強度揺から事象関連深部脳活動(ER-DBA)を導出する方法を開発し,脳機能ネットワークの直接モニタリングに適用した。その結果、高次の認知処理において反応前にDBAのdipが形成され,それがデフォルトモードネットワーク(DMN)の脱賦活に相当することを明らかにした。さらにこのdipの深さはDBAの平均値と正の相関を持つことから、認知処理に必要なDMN脱賦活は上部脳幹モノアミン神経系の賦活に支持されることを明らかにした。またDBAのdip形成時に頭頂部頭皮上脳波は陰性電位を呈していることから,DMN脱賦活は認知処理における選択的抑制に対応した状態であると推察した。以上の結果から認知処理時の脳機能ネットワークのダイナミクスの基盤を明らかにした。 次に,認知処理時におけるモノアミン神経系の活動に相当量のエネルギーが必要と予測されることから2週間に渡り連続血糖値モニタ(CGM)を行うパイロット試験を行い、平日に出現する血糖値スパイクが休日では出現しないことを認めた。これにより、認知処理のため必要なエネルギーがストレス性ホルモン(ステロイド)による糖新生である可能性を示した。シフト勤務では睡眠リズムの乱れから交感神経系が亢進するので,この糖新生が重篤疾患発症の源泉となり得ると考えられた。 大規模臨床試験実施の予備として、若干名のシフト勤務及び日勤従事者に対して心不全を予測するフレミンガムリスクスコアのアンケート調査を実施したが,両群に有意差は認められなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新たに開発した深部脳活動モニタ法は、脳波後頭部α波強度揺らぎからtrial-by-trialでの事象関連深部脳活動(ER-DBA)を基盤とし、脳血流を対象とした核磁気共鳴画像法の時間分解能の限界を大幅に凌駕する1秒以下の領域で脳機能ネットワークのダイナミクスを明にすることを可能とした。 シフト勤務による重篤疾患リスクを評価する指標として従来法(心疾患罹患予測に用いられているフレミンガムスコアによる評価法)の問題点を洗い出すとともに適切な方法(連続血値モニタリングによる方法)の検討を早期に着手した。
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今後の研究の推進方策 |
予測行動や外発性随意運動を抑制し高度に深部脳活動の賦活を必要とする課題をER-DBAの手法を使って探索し、日常生活の中でも簡便に試行できる課題の作成を図る。またER-DBAの計測に並行して取得したCGMのデータから課題に同期した糖新生の成分を抽出することにより,認知処理負荷時の血糖値の推移を明らかにする。これにより、認知処理に必要なエネルギーがストレス依存の糖新生により行われることを検証する。 また、日常生活における血糖値推移の調査対象をシフト勤務看護師に拡張し、日勤従事者との差異を明らかにする。また酸化ストレス状態を簡便な生理マーカーから評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
シフト勤務従事者に対する心不全罹患リスク評価の事前パイロット調査により、免疫状態のみならずストレスによる血糖値スパイクの発生頻度を明らかにする必要があることが判明したので予定していた免疫グロブリンおよびメラトニンをターゲットとした免疫能評価試験準備を翌年度に行うこととしたため、次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
免疫グロブリンおよびメラトニンを唾液から定量評価するための試薬,血糖値スパイクによる酸化ストレスを評価するための試薬、並びに神経生理試験用消耗品一式を購入する。
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