本研究の狙いは,これまでの目視点検という人的労力に頼る河川管理から、車両走行という低コストで迅速に対応できる作業ながらも、面的で定量的な値に基づいた的確な維持管理につながる河川管理に変えることである。具体的には、レーザスキャナあるいはデジタルカメラを車両に搭載して走行しながら対象物の3次元座標および画像を取得する技術に関して、高精度で広域の3次元データを取得するためのハード技術と,取得されたデータから堤防や河川構造物の変状をリアルタイムで把握するソフト技術を完成させることが目的である。本研究の結果、次の成果を得ることができた。 1.車両走行して堤防の3次元座標を取得する際、ガードレールや法面上の植生の影響を排除し,さらに非鋭角的な入射角によって点群の高精度化を図るため、高所からのレーザ照射を可能にするハード技術開発を行ない、走行車両の自己位置を特定する精密測位技術を改良することで、天端を車両走行した場合でも、法面を含めた堤体全体を±20mmの精度で3次元的に計測する技術を実現させた。 2.車両に搭載されたデジタル画像機器によって取得された画像データを用いて3次元的に河川構造物を復元し、その復元像と前記高精度レーザ点群と重ね合わせることにより、構造物上の任意の計測点の座標を特定できる解析技術を開発した。その後,当計測点の座標の経時変化を追跡することにより,構造物の変状発生状況を定量的にデータベース化することも可能にした。すなわちレーザ点群だけでは構造物上の任意の計測点を特定することは困難であったが,写真測量技術による3次元復元像と重ねる技術により、任意の箇所の座標値を計測でき、堤防だけでなく河川構造物の変状検知も可能にした。 本研究は、このようにハードとソフトの両面の技術開発により、これまで実現できなかった堤防や河川構造物の変状を高精度に把握する車両走行計測を実用化させた。
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