災害発生時に災害発生現場の状況の観察ができる機体を実現するために、マルチローター形式に推力偏向技術を加えた全天候型の機体を開発した。 機体構造が工の字の形状をした4発型マルチコプタにおいて、プロペラローター自体を傾斜させるティルト機構を追加し、プロペラローターによる推力を水平方向に偏向させることで、機体を傾斜させることなく水平移動が可能な機体を開発した。防水については、プロペラローターのモータ、ESC、ティルト機構のサーボモータは防水仕様のものを採用した。 まず、プロペラローターを機体の前後方向に傾斜させることができる2軸のティルト機構を備えた機体を試作した。プロペラローターは直径18インチのものを使用した。姿勢制御系にはオープンソースのArducopter3.6.7をベースにティルト時の姿勢制御を実装したものを開発した。また、2次元風向風速系を搭載し、機体に対する風向・風速を計測し、それに応じて自動的にプロペラロータを傾斜させ、自動的に風に対抗する制御系を組みこんだ。 機体の制御は、通常のマルチコプタと同様に推力差動で機体を傾斜させて移動する方法と、姿勢制御系への目標値を0度(水平)とし、推力差動で機体姿勢を維持しながら、ティルト機構により推力の水平方向成分を発揮して移動する方法の二つを用意した。ヨー軸の制御においては、左右のプロペラロータの傾きを差動させることで、通常のプロペラローターの回転差動による反トルクを利用するより応答がよく、機体姿勢が安定する制御が行えた。試作した機体は、NHKの番組“超絶スゴ技”にて大型ファンによる風速20m/sの強風下での飛行を行い、風に逆らっての飛行に成功した。また、GPSを用いた位置制御に風向風速計の計測結果を用いた対気速度をフィードバックしたところ、位置決め精度が向上した。
|