本研究は,「人工降雨技術を用いた山形県尾花沢市の豪雪軽減」に関して次の3項目から構成されている.1)豪雪を引き起こす気象条件および雪雲発生のメカニズムを把握すること.2)数値モデル(WRF)による尾花沢市周辺域の豪雪の原因解明をすること,3)航空機による豪雪軽減実験の人工効果を評価し,豪雪軽減の費用対効果を示すことである. その結果,1)気象庁のアメダス(AMeDAS)データを用いて,尾花沢市と山形市の降雪量の差が大きかった事例の総観場を見ると,西高東低の冬型の気圧配置の事例が多いことが特徴として挙げられた.2)山形県尾花沢市の豪雪発生メカニズムについてWRF数値モデルを用いて解析を行い,a)標高の低い最上川の谷部分に沿って日本海から尾花沢市の方向に雪雲が流入してくること,b)月山・葉山の影響による風下ジャンプと背面の山脈による強制上昇によって尾花沢に定常的な上昇気流が発生し,雪雲が活発化したこと,c)月山・葉山の風下側で風の収束が存在することである. 以上のように,尾花沢の豪雪は地形特性を強く反映した結果であることがわかる.今後,豪雪軽減研究を推進していくために,以上得られた地形効果を十分考慮して,自然の雪雲と人工的に変化した雪雲の挙動を定量的に評価していく必要がある.3)航空機を用いた人工降雨実験は,予算の関係で山形県沖でなく県営名古屋空港の近くの若狭湾で2017年12月27日に3回実験を実施した. 1回目と3回目は途中で消えたり,他の雲と合わさったりして追跡が不可能になったが,2回目の実験では,実験10分後雲が発達し変化が見られ,その後,この対象積雲をレーダーエコーで追跡した結果,発達し,降水面積が広がり,しかも寿命が延びた. 以上より,人工降雨法(液体炭酸を雲に撒布)を適用して豪雪を緩和する技術も,将来の画期的な対策として実用化される可能性が大いに示唆された.
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