研究課題/領域番号 |
16K01340
|
研究機関 | 国立研究開発法人防災科学技術研究所 |
研究代表者 |
中井 専人 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 雪氷防災研究部門, 総括主任研究員 (20360365)
|
研究分担者 |
橋本 明弘 気象庁気象研究所, 予報研究部, 主任研究官 (20462525)
|
研究期間 (年度) |
2016-04-01 – 2019-03-31
|
キーワード | 比表面積 / SSA / 新積雪密度 / 偏波レーダー / 気象モデル |
研究実績の概要 |
降雪の新積雪密度ρinitについて,防災科学技術研究所雪氷防災研究センターにある降雪粒子観測施設(FSO)の,降雪粒子を直接取り込む-3℃の低温室を使用し,降雪を変質させずに測定した.並行して,過去の観測も含めて測定事例を整理し,比表面積(SSA)及びρinitの観測データ,レーダー観測,および気象モデルの比較を可能にした.また,長岡で開催したInternational Workshop of falling snow and snow coverにおいて,新積雪物理量と降雪粒子の特性,及びレーダー観測される降雪雲に関する発表,討議を行った.レーダーに関して,防災科学技術研究所雪氷防災研究センターの所有するXバンド偏波レーダー(mp2レーダー)を使用し,雪雲内の降水強度,気流,及び偏波パラメーターについての観測値を得た.ρinitとSSAの測定された降雪粒子をもたらした降雪雲について,降水強度の鉛直プロファイル,及び,高度ごとの降水強度出現頻度分布を解析した.さらに、気象庁の数値気象モデルJMA-NHMによる,地上及び大気下層の雲物理量(雪,霰,雲氷,雨,雲水の混合比と数濃度)及び気温,過飽和度から,大気下層におけるSSAを診断的に推定するアルゴリズムを試作し,実測値との比較を可能にするとともに, ρinitとSSAが測定された降雪粒子をもたらした降雪雲について,降雪粒子の成長を解析できるように,必要な時間をさかのぼった時刻からの数値実験をJMA-NHMを用いて行った.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は,比表面積(SSA)及びρinitの測定を行い,同時に偏波レーダー観測を行って降雪雲の雲物理構造に関する情報を得ておき,それを気象モデルから診断する手法を開発する.28年度は,暖気が入って雨・みぞれになることが多く、ρinitの測定は行えたがSSAとの同時測定はできなかった.しかし,過去事例も含めて観測データから事例抽出を行うことにより,気象モデルと比較可能なデータを得ることができた.一方,気象モデルからはアルゴリズムの試作と共に,JMA-NHMを用いた数値実験のデータセットが作成され,データ交換が行えた.このように,観測については好条件に恵まれなかったためやや遅れが生じたが ,次年度の計画に向けて必要とされるデータセットをひととおり整えることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
FSOにおいてSSAとρinitの同時測定を行い,観測データの蓄積も図る.レーダー観測についても平成28年度と同様の設定によって継続し,降雪強度の3次元分布,鉛直流に加えて,偏波パラメーターの鉛直プロファイルから雲内の降雪粒子形状の変化を解析し,雲内でどのような雲物理過程が卓越して測定されたSSAを持つ降雪が形成されたのか観測的に記述する.以上の観測により作成されたデータセットを使用し,降雪のSSAと気象モデル内で予測される変数との関係を解析する.その結果を基に,平成28年度に試作したSSAを診断的に推定するアルゴリズムを改良し,実測値との比較による検証を行っていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
平成28年度は暖冬傾向で雨・みぞれになることが多く,SSAとρinitの同時測定ができなかった.本研究ではこのような年々の変動も考慮して3年間の観測を予定しており,29年度使用額となった分は観測のために使用する.
|
次年度使用額の使用計画 |
上記理由に基づく分は,当初計画の29年度分に加えて観測のための経費として使用する.それ以外は,国際学会を含めた成果発表のための費用,投稿料,データ蓄積用ストレージ等であり,当初計画通りに使用する予定である.
|